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シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 160 揺れる心

 まさかわたしは嫉妬をしている?…

 そんな、昨夜、彼の強いわたしに対する気持ちを確認し、確信し、今朝はあれほど自信に満ちていた筈なのに…

 彼女、佐々木室長に対して先手を切れて、上からになれたと想っていたばかりなのに…

 わたしか揺れている?…

 たかが電話で?…

 それも仕事上の電話くらいで…

 更に激しくザワザワと騒めきが高まり、昂ぶり、心が揺れてきていた。

 ブー、ブー、ブー…

 すると電話が着信する。

 あっ、彼からだ…

「あ、お、大原常務、おはようございます」
 わたしは動揺に揺れたまま、いや、激しく心を揺らしたまま、彼の電話に出る。

「あ、すまない、あのまま携帯電話を切ったままだったらしくて…
 今、気付いたんだ…
 着信あったから、急用か?」

「あ、いえ、あ、あのぉ、朝から何度も…」
 わたしは敢えて何度も…と、言った。

「朝から何度も佐々木ゆかり準備室室長様からお電話があって…」
 そしてワザとフルネームを告げる。

 小さな抵抗であった…

「あ、う、うん、そ、そうか…
 いや、今は山崎専務と少し話しをして…」

 ウソ、嘘だ…
 その彼の声音で、それがウソだと分かってしまった。

「なんか、大至急、連絡が欲しいとのことですけど…」
 だが、山崎専務、おじさまのことはワザとスルーをし、敢えて、彼女の言伝を伝える。

「あ、う、うむ、そ、そうか…」

 本当に彼はウソ、嘘がヘタなようだ…

 だからわたしはワザと…
「あ、今日は午前中のご予定は無いですけれど…」
 と、敢えて、そう伝えたのだ。

 どうせ、既に彼女とは話しをしているくせに…

「あ、うん、そうか…」

「はい、だから午前中ならばコールセンター部にお立ち寄りしても大丈夫ですから…」

「え。あ、あぁ…」
 わたしはワザと先回りをして、そう伝えた。

 そして、これは…

 わたしは全部知っていますから…

 お見通しですから…

 という、嫌味を込めたつもりでもあった。




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