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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 12 稲葉ディレクター(6)

 そうか、今はある意味立場は逆転している訳なんだ…

「それに俺はさぁ、全然、無理矢理には推してはいかないから…」

 彼は、稲葉ディレクターは、あの頃から、こうして人の間を泳ぐのが…
 つまりは世渡りが上手だった。

「だからさぁ、仮にゆかりお嬢さんが世間に注目されてもさぁ…
 誰一人として過去に触れたりはしてこないさ…
 皆、自分が可愛いからさぁ…
 逆にフォローしてくれる筈さぁ…」

 なるほど…
 彼の言わんとしてる意味は理解できた、そして違和感も分かった。

 だけど…

「でもね…」

 そう、一人だけ…

「でもね、通じない輩も一人だけ居るわよ…」

 わたしはそう呟くと…

「あっ、う、うん…」
 
 さすがは稲葉ディレクター…
 直ぐにピンと来たようである。

「あ、うん、ヤツか、あぁ、ヤツな…
 三山蓮、あ、蓮太郎なぁ…」
 と、吐息混じりに呟いてきた。

「うん…」

「アイツはさぁ…
 また、特殊っていうかぁ、特別っていうかぁ…
 あ、いや、なんだろう…
 そう、そういう事には全くもって気にしないっていうかぁ…」

「…………」
 わたしは黙って頷く。

「平気なんだよなぁ…
 前のあの女関係のスキャンダルだってさぁ…
 全然平気っていうかぁ…
 まるで他人事みたいだったしなぁ…」

 以前のスキャンダル…

 それは共演した新人女優との恋愛問題であり、そしてそれを全くもって隠さず、否定せず、いや、コメントもせず、そしてそんなゴシップ専門雑誌で載りまくり…
 しかし、全く無視、コメントも釈明記者会見等もせず。

 だが、お相手の女優は新人が故に…
 消えていってしまった。




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