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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 14 稲葉ディレクター(8)

「えっ、ろ、ロッキー…」

 わたしは予想外の、いや、ほぼ忘れていた懐かしい思わぬ伏兵的な、いや、違う…

 ある意味わたしの過去の『黒歴史』の原点の存在である男…

『ロッキー』こと『轟勇斗』
   (とどろきはやと)
 という名前の突然の登場に…

「…………」
 あの『三山蓮太郎』以上の衝撃を感じてしまい、動揺し、絶句してした。

「いやぁ、この前、ヤツ、ロッキーのいるあの商社の新製品のCMに起用するタレントの絡みでさぁ、撮影現場に顔を出したらさぁ…
 ヤツが居たのよ…」

「…………………」

「で、思わず声を掛けたら…
 なんかヤツは本社の企画宣伝部長に出世した…って本人が云ってたよ」

「……そ、そう…企画…部長に……」

 わたしの動揺は収まらない…

「なんか6、7年くらいヨーロッパの各支社を廻って本社勤務に戻ってきたら、元々、長年組んでいた上司が出世して、畑違いの部署に引っ張られたって……」

「…そ、そう…なんだ…」
 稲葉ディレクターは得意気に話してきているのだがあまり頭に入ってこず、返事も上の空になっていた。

「あ、でもホントにゆかりお嬢さんの事は話してないからさぁ…
 それよりもさぁ…
 コメンテイターの件、マジで考えてよぉ…」

 わたしは『ロッキー』という突然の名前の登場と『三山蓮太郎』やこの稲葉ディレクター、それにこの前の
『夢の国』のオフィシャルホテルの支配人等の様な、過去の『黒歴史』に関わった輩達の続けての出現に…
 本当に心が衝撃を受けてしまい、そしてかなりの動揺に揺らいでしまっていたのだ。

「え、あ……う、うん……」
 だからつい、そんな曖昧な返事をしてしまった。

「おっ、ま、マジ、じゃあ、後でまた連絡するからっ」
 そしてそう言ってくる稲葉ディレクターを流し…
 わたしはその場を離れ、杉山、鈴木くんの待つラウンジへと向かう。

 そう…
 わたしはあまりの動揺に、この海千山千な、それに煩い、稲葉ディレクターから早く離れたかったのだ。

「ふうぅ…」
 そしてエレベーターに乗り、そんなため息を漏らしてしまう。

 なぜ、今になって過去の『黒歴史』の輩達が次から次へと…

 それに今更『ロッキー』なんて…

 なぜに彼が…

 あの『黒歴史』の原点的な存在が…

 今更なんで…




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