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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 85 敦子の想い(22)

 そうしてわたしはこの高校一年生の、間もなく16歳という夏休みの終わりの夜から、大学一年生の夏までの約四年間という期間…
 このホンモノのビアンであるまゆみサマにたっぷりと優しく愛され、すっかりと心とカラダを女性しか愛せないビアンという嗜好に刷り込まれ、いや、染まっていったのであった。

 そのまゆみサマのわたしに対する愛情は本当にホンモノといえたのであったのだ…

 もちろん当時のわたしはまだ高校生、しかも一年生であり、まゆみサマよりひと回り歳下の子供であったのだが…

『まるで男と女の関係であったなら、わあしはロリコン好きのオヤジみたいねぇ…』
 と、時折そんな自虐の言葉を云いながらもわたしを大切に愛してくれたのである。

 当時のまゆみサマは28歳の都内在住の歯科医師であったのだが、まだ高校生のわたしとの関係を円滑にする為にと横浜にマンションを借り、いや、職場まで変えてくれ…
『ちゃんと勉強もしてね』
 と、自らの環境の全てをわたしに合わせて変えてくれたのだ。

 そしてわたし自身もそのまゆみサマの愛情の深さと慈しみの想いを素直に受け入れ、受取り…
 いや、まゆみサマという凛とした美しさやその彼女の理知的で女としての素晴らしい生き方そのものに憧れ、そうなりたいと必死に愛し、愛されていったのである。

 だからそれからはすっかりと生活も落ち着き、いや、全てはまゆみサマに合わせて真面目に高校に通い、勉強もちゃんとして…
 ううん違う、将来はまゆみサマみたいな素敵な大人の女になりたいと…
 まゆみサマと並んでも恥ずかしくない大人の女になりたいと…
 そしてもっともっと愛し、愛されたいと考え、毎日を送っていったのであった。

 もう、まゆみサマ無しでは生きられない…
 と、すっかり彼女に心とカラダの全てを懇到し、捧げ、求め、心棒したのである。

 その後、紆余曲折があったのだが、そんな青春時代を送り…
 そしてわたしはすっかり女しか愛せない、ビアンという性嗜好も完全に開花させてしまったのだ。


「……………」

 わたしは…
 深夜便なのであろうか、夜空に飛んでいく羽田空港からのジャンボジェット機の赤い尾翼灯の点滅の光を眺めながら、ふと、そんな過去を思い返していた。

「ふうぅ…」

 そして、そう吐息を漏らしながら振り返る…




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