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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 86 敦子の想い(23)

「ふうぅ…」

 ふと、そんな昔を想い返しながら思わず吐息を漏らし、そして何気なく後ろを振り向くと…
 そのビアンという性嗜好に開花したきっかけとなった、わたしのもう一人の、いや、そもそものきっかけであり、あのまゆみサマとの初めての夜からずうっと心の奥深くにしまい込み、隠していた存在である『ゆかりお姫さま』こと『佐々木ゆかり準備室室長』が、わたしの指戯により快感に墜ちて後ろで寝落ちしているのだ。

 あの腐れ縁である友人の越前屋の導きによる劇的なゆかりお姫さまとの再会は…
 いいや、佐々木ゆかり準備室室長にとっては過去のわたしとの出会いは全く記憶にも無い訳であるから、とても再会とは云えないであろうが…
 あの8月8日の居酒屋での出会いは、わたしにとっては運命の出会いではなく、そう、再会といえる。

 だってあの頃から、あの約9年前から…
 本当にこの9年間、紆余曲折は多々あったのだが、この思い、想い、関係を、いいや、佐々木ゆかりを、ううん、ゆかりお姫さまという存在を心の奥深くに秘めながらも本当はずうっと求め、それをまゆみサマというリアルで絶対的な存在の陰に隠しながら切望していたのだから。

 この佐々木ゆかりという存在は…
 いや、ゆかり姫という存在は…
 あの『クラブCANDY』での別れ以来、わたしにとっての憧れの、ううん、憧憬の永遠の存在、存在感としてこの9年間、心の奥深くに潜んでいたのである。

 それが偶然にもこうして、わたしにとっての再会を゙果たした…

 だから、この存在をわたしはもう絶対に離さない…

 そう、離さないし、離れたくはないし、離したくはないんだ…
 あのまゆみサマとみたいには、悲しい終わりにしたくはない。


「ゆかり姫…」
 そしてわたしはローソファに寝落ちしている彼女にそう呟きながらしゃがみ込み、肩に手を触れていく。

 わたしの手に彼女、ゆかり姫の温かい感触を感じ、リアルな存在感を実感しながら…

「まゆみお姉さま…」

 もう一度、まゆみサマとのあの愛の日々を…

 そして悲しい終わりを想い返していく…





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