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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 96 敦子の想い(33)

『もしかして、まーちゃんに何かあったの?』
 人生経験豊富そうなママが、そんな泣きじゃくるわたしに慈しみの目を向けて訊いてきた。

『ひ、ひ、ひん、あ、あの……』
 そしてわたしは何とか今迄の経緯を簡単に話しをする。

『あ、あら、まぁ……』
 するとママは、そんなわたしの話しを聞いて絶句し、暫し沈黙する。

 多分、そのママの反応は…

 まさか、そこ迄の悲劇とは、つまりはせいぜいの痴話喧嘩レベル的な話しであり、まさかガン罹患による「死」という内容では無いとは思って、いや、誰でもそうであろう…
 予想以上の重さに絶句した様であったのだ。

『……で、それきりなの?』
 暫し沈黙をし、重い口調で訊いてきた。

『…………』
 わたしは黙って頷く。

『あ、ら、まぁ…それは…』
 そしてまた再び絶句した。

『な、何も…分からないし、分かりようもなくて…』
 わたしはなんとか声を振り絞り、そう応えた。

『かわいそうに…ツライわねぇ…
 でもねぇ…
 それはわたし達の宿命みたいなモノよねぇ…』
 と、ママはいつの間にかにカウンターから出て隣に座り、わたしを見つめ、そして肩をそっと抱き寄せてくれて、耳元でしみじみとそう呟いたのだ。

 そう宿命…

 不惑な関係の…

 宿命であり、現実だと…

『わたし達はさぁ…
 世間一般的には普通じゃないからさぁ…
 そして理解もなかなかされないしねぇ…
 ましてや家柄絡みじゃ、余計に毛嫌いされてしまうし…
 それは宿命だから…』

 そう…
 寂しそうに、いや、哀しそうな声音と口調で呟く。

『わたしもさぁ、色々あってさぁ…
 実家とは縁を切ったままだしね…』

『え…』

『この前もね、風の噂で父親画亡くなったらしいのを聞いたのだけれどね…
 尋ねられないでいるのよねぇ…』
 そして、そうため息混じりに、哀しそうに呟く。

『あ…え…』
 わたしはそんな現実の重さに…
 言葉を返せないでいた。

 みんなそれぞれ、色々抱えているんだ…

 だけど…

 だけど…

『でもねぇ、世間一般的には認めて貰えないけれどねぇ…
 ある意味、性癖ってさぁ、ううん、性嗜好ってさぁ…
 本能だからさぁ…』

『え、ほ、本能って?』




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