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　106　敦子の想い(43)

　わたしはやはり、ゆかりお姫さま的な存在が欲しいのだ…

　あの頃…

　そう、大学二年生に進級した春先辺りには、わたし自身がはっきりとそうした自分の欲望、切望を理解をし、そんな想いの迷宮に陥り、彷徨い、そして迷走した挙げ句に…

　散々、様々なタイプのパートナーとビアン的セックスを繰り返し、その自分の思いが叶わぬ想いであると絶望をし…

　そしてようやくそんな想いに開き直れ、達観できたのだった。

　つまりは叶わぬ想い、夢なのだ…と。

　だから、定期的にカラダの疼きを、ビアンの欲求を…
　つまりは女に抱かれ、抱き、疼きを鎮められればいい…と。

　ゆかりお姫さま的な存在感なんて居る筈がない、居ないのだ…と。

　そうして心の空虚感を無視し、いや、そんな想いをある程度無視できる様になり、そしてカラダの疼きだけをとりあえずこの『レズビアンバービビアン』に通い、定期的にビアン漁りをして、なんとか鎮められる様になり…

　せめて叶わぬ想い、思いならば、まゆみサマみたいな、そしてゆかりお姫さまみたいな凛とした美しい女性に、自立した魅力溢れる女性になりたい、なれる様にと…
　
　なんとか今日まで頑張ってきたのだ。
　




「ふぅぅぅ…」
　わたしはそんな約９年間の今までの心の迷宮への迷走の想いをふと、想い返し…

　そんな永遠的な憧れの存在感であったゆかりお姫さま…

　いや、今、リアルに、このわたしの横で寝落ちしている『佐々木ゆかり室長』との奇跡的な再会に…
　心を震わせ、感嘆の想いの吐息を漏らし、そしてゆかり姫の白い肩に触れながら、温かく、柔らかな感触に愉悦の昂ぶりを感じていたのだ。

「あ…」
　そしてそんな感情の昂ぶりのせいなのか無意識に涙が込み上げ、いや、溢れ、頬を伝い落ちていく感覚に思わず声が漏れた。


「…な、なんで、泣いているの？」

「え？…」

　すると不意に傍らから、そんな声が…

　いや、憧れの、奇跡の、ゆかり姫の声が聞こえてきたのである…