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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 119 1997年8月20日午前6時40分

 わたしはコーヒーの香りで目覚めた…

「ゆかりさんおはようございます、コーヒー煎れましたから」
 ベッドルームからリビングに入ると敦子が爽やかな…
 そう、本当に爽やかな笑顔を浮かべながらコーヒーをリビングテーブルの上に置いた。

「あ、う、うん、おはよう…」
 わたしはそんな彼女の本当に爽やかで美しい笑顔に少しドキンとしながらリビングのイスに座る。

「ブラックで良いですか?」
「うん…」
 わたしは頷きながら、その彼女の笑顔に心を揺らしてしまう。

 なぜなら…
 そんな彼女の爽やかな笑顔からは、昨夜の、ううん、つい2時間少し前までのあのビアンの快感に泳いだ淫靡に淫れた雰囲気が、いや、まるでそんな事実など無かったかな様にしか見えなかったから。

 え、昨夜は…

 アレは夢だったのか?…

 わたしはコーヒーを飲みながら一瞬、そんな想いに陥ってしまう。

「あ、美味しい…」
「え、あ、美味しいですか、良かったぁ」
「うん、すごく美味しいわ」

 そう、彼女が淹れてくれたコーヒーが、そんなわたしの心の揺らぎを消してしまうくらいに美味しいのだ…

「すいません、勝手にキッチンの戸棚弄っちゃいましたぁ」
「うん、いいのよ…」
「でも冷蔵庫はカラッぽなんで、何か朝食作ろうかなって思ったんですけど…」
「あ、うん、ごめん、わたしウチじゃ殆ど料理しないから…」

 いや、料理が全く出来ないのだが…

「え、そうなんですかぁ、じゃ殆ど外食なんですかぁ?」
 すると敦子が少し驚いた顔で訊いてきた。

「うん、そ、そうなのよ、ほら、あ、後片付けが面倒で…」
 と、わたしはさり気なく誤魔化すつもりででそう言うと、彼女はジッとわたしの顔を見てくる。

 あ、ウソってバレたかも?…

「じゃあこれからは、わたしが作りますね、わたし料理大好きなんです」
「え、あ、ほ、本当?、それはなんか嬉しいかも…」
「は、はい、わたし、ゆかりさん、あ、姫の為になりたいんです」

「えっ…」

 あっ…
 やっぱり、昨夜は夢じゃなかったんだわ…
 
『…わたし達は始まったばかり…』
 そして昨夜の敦子のそんな言葉が、急に脳裏に浮かび…

 ドキドキドキドキ…

 ウズウズウズウズ…

 また再び心とカラダが昂ぶり疼いてきてしまう…




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