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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

7 ランチ

「あ、大原常務、お待たせしましたぁ」
 いつもの明るい越前屋朋美がエレベーターを降り、エントランスに破顔といえる笑顔を浮かべて歩いて来た。
 そしてそんな彼女の笑顔を見ると心がホッと緩む。

 あぁ、なんていい笑顔なんだ…
 ゆかりが前に云っていたが、本当に彼女の存在感には救われる思いがする。

 凛とした存在のゆかりと律子…
 その二人の間の緩衝材としてのこの魅力溢れる笑顔の越前屋という存在感。

 意外と、最後に天下を取るのはこんな彼女みたいな存在なのかもしれないな…
 ふと、なんとなくそう思った。

「さぁ、何が食べたいんだ?」

「そ、そんなぁ、毎回ランチをごちそうしてくれなくてもぉ…」
 彼女はそんな言葉とは裏腹な、本当に嬉しそうな声で言ってくる。

「いやいいんだよ、わざわざコッチに来て貰っているし、それにキミと一緒だ食欲がいつもより湧いてくるんだよ」
 これは本音でもあった。

 とにかく彼女と一緒の食事も楽しい、いや、余りにも喜んでくれるから、本当に馳走のしがいがあるのだ…

「えぇ、どうしよう」
 彼女は嬉しそうに、そして屈託のない、明るくて魅力溢れる笑顔を浮かべながら迷っている。

「何でもいいぞ」
 そしてそう私が言うと…

「あ、お寿司がいいですぅ」

「おう寿司か、いいな、しばらく食べてないからなぁ」
 という訳で…
「じゃあせっかくだか築地まで行くか」
 と、タクシーを拾い、築地場外の飲食街に行く。

 そういえば約2ヶ月位前にゆかりとホテルの帰りに銀座デートをして、やはり築地場外で食事をしたなぁ…

「うわぁ、築地場外なんてぇ初めてですぅ」
 越前屋はタクシーを降りるとそう嬉しそうに呟いてきた。

「さぁ、アソコに行くか」
「はい」
 そして私はあの時ゆかりとも行った寿司屋に入る。

 そして食事を済ませ、少し銀座方面に歩きながら…
「コーヒーでも飲むか」
 と、カフェに入った。

「さてと、午前中に色々と調べてくれていたみたいだなぁ」

 そう彼女には以前、この保険会社の悪の権現といえる会社を私物化し、自分の都合の良い様な人事をしていた前常務に追い遣られてしまった優秀な人材を、この保険会社の唯一の光明的な存在であり、総合職として獅子奮迅の抗いをしていた越前屋朋美…
 という人脈により、検索をして貰っていたのである。

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