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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 19 アポイントメント

 これで林田社長は味方になった…
 後は今夜、山崎専務に話しを通すだけである。

 この『再生計画』はなにも、本社の松本副社長派閥へのクーデターではないのだ…
 いや逆に、この『○△生命』を早急に立て直しをし、経営再生が上手くいけば、もちろん派閥の、いや、まずは山崎専務の手柄となり、本社内ではますます確固たる地位の安定の礎の一つになるのは明確であるのだ。

 そして私の一つの、いや、最初の勲章にもなるはずなのである…

 だから、もちろん、山崎専務が反対するはずがない。

「律子くん、山崎専務に今夜のアポを取っておいてくれないか」
 私は林田社長室から戻ると直ぐに、秘書である松下律子にそう頼んだ。

「あ…は、はい、承知しました…」
 そう返事をしてくる律子は、キラと目を光らせてきた。

 さすがは聡明な律子である、いや、多分、おそらくは私なんかより遙か上から私を見ているであろう彼女には…
 私の考え、行動なんかは全てお見通しなのだろうと思われる。

 それに私はそれでいいとも思ってはいた…
 なぜなら、私は律子が、この日本経済の主流のDNAを持つ彼女に選ばれた存在であるから。

 この先、必ず、彼女が私の後ろ盾となり、守ってくれる筈だらである…
 だからこそ、今夜の山崎専務へのアポイントメントは敢えて律子を通すのだ。

 山崎専務にならば、いつでも連絡は私自身から取れるのだが…
 今夜のアポは敢えて律子を通すのである。

 それは律子に対しての同席を促すメッセージにもなり、山崎専務に対しても無言のメッセージになるのだ…
 律子が同席する意味、それはこの前、山崎専務が私に律子の素性を教え、説明してくれた内容に通ずる訳であるから。

 そしてもう私が律子の素性を知っているという事の意味が…
 この先の私の盾になるという事も山崎専務は既に理解している筈だからである。
 

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