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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

21 山崎専務の包囲網

「……という訳なんで、とりあえずこの四人を大至急、呼び戻したいかなと…」

 午後7時少し前…
 私と秘書の松下律子の二人で、赤坂のホテルのメンバーシップラウンジで本社の山崎専務と待ち合わせをし…

 いつもそうなのだが、いつも山崎専務は約束の少し時間前には来るから、私達も早目に到着すると、やはり山崎専務は来ていた。

 しかも、いつもの様に銀座のクラブ『ヘーラー』のママも連れ立って…
 もうすっかり、二人はいい関係になったみたいである。

「うむ、そうか、それはいいなぁ…
 さっき林田くんから聞いていたよ…
 ま、キミの思う様にどんどんと進めて構わんよ」

「あ、は、はい」
 もう山崎専務は既に林田社長から聞いていた…
 と、云ってきた。

 それは、林田社長は完全に山崎専務の手駒の一人であるという事を私に対して曝すという意味であり、つまりそれは私は完全に山崎専務の包囲網の中にいるんだ…
 という事実を遠回しに云ってきているということなのである。

「いいよ、どんどんその再生計画を進めてくれたまえよ」
 
「はい…」
 その再生計画が成功すれば、それはつまりは山崎専務の評価が上がる…
 という事であり、仮にイマイチ再生、再建が滞ったとしても、どのみち破綻寸前であったのだから、破綻しない限りは失敗にはならない。

 そして成功、上手くいけば良し、悪ければ私のせい…
 どっちにしても山崎専務は汚れはしないのだ。

「で、さっそく新潟支社に行くのか?」

「はい、明日にでも…と」

「うん、そうか、ま、常務就任もすんなり決まったし、当面は急用もないから、その『再生計画』優先で頼むよ」

「はい」

「あ、大原くん、もう常務なんだからちゃんと秘書も同行しなくちゃダメだからな」

「え、あ、は、はい、もちろんです」
 実は、本当はまずは単独行動しようと考えていたのだが…

「あと、前にも言ったんだが、なるべくハイヤーを使いたまえよ」

「は、はい」
 釘も刺されてしまった。

 そのハイヤーの件は今日、律子に云われたばかりであった…

「あら、新潟行くのね、いいわねぇ」
 このタイミングでママが初めて言葉を発してきたのだ。

 さすが一流の銀座のクラブママであるからちゃんと場をわきまえ、かつ、口も固い…



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