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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

22 ママと律子

 「あら、新潟行くのね、いいわねぇ」
 このタイミングでママが初めて言葉を発してきたのだ。

 さすが一流の銀座のクラブママであるからちゃんと場をわきまえ、かつ、口も固い…
 そのママがそう言ってきたという事は、仕事の話しはもう終わりという意味でもあるのだ。

「はい、新潟は初めてです」
 そしてさすが空気を読む事には抜群の律子が、そうママの会話に合わせて答えてきた。

 つまりそれは、とりあえず『再生計画』が山崎専務の了承を得たから、そして新潟支社に行くという報告をしたから仕事の話しは終了という律子からの合図であり…
 現段階ではそれ以上の余計な事は言わない、話さない方が良いというある意味、律子からの秘かな忠告の意味でもあるのだ。

「あ、いや、仕事ですから」
 と、そんな律子からの言葉の意味を察知した私は、機転を利かせるつもりもあり、敢えてそう言った。

「うむ、ま、確かに仕事だから、遊びではないけど…
 地方への出張はそれなりの楽しみもあるからなぁ」
 すると山崎専務がママのフォローを兼ねて話してくる。

「そうですわよ大原さん、地方出張は、仕事が終えたらリラックスしても良いんじゃないんですかね?
 ねぇ、専務さん…」
 と、ママが山崎専務に振る。

「うむ、確かにそうだな…
 それに新潟支社のヤツは本社にカムバックの話しだから、ゴネたりはしないんじゃないのか?」

「あ、はい、そうかもしれませんが…
 いちおう万全を尽くさないと…」
 そうなんだ、油断は禁物なのである…
 なにせ、優秀であるからこそ、この飛ばされた約1年間の間に、どんな考えを持っていたのかは分からないから。

「ま、そうだな、だが、仕事が終わったら気分転換もリラックスも必要だからな、なぁ、律子…」
 そう山崎専務が言い…
「そうですわよ、終わったら二人でゆっくりもね、ねぇ、律っちゃん…」
 そうママが後に続く。

「あ、はい、そうですね、ま、大原さんのスケジュールはわたしが管理していますから、終わったらゆっくりできるように調整しますわ」
 と、律子がこの話しを締めにかかる。

 そう…
 今夜のこの山崎専務への話しは、あくまでも報告がメインなのだから。

 

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