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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

31 気恥ずかしさ…

「さあ、行こうか」
 そしてそう云って軽く律子の肩を抱き寄せ…
「あ…」
 ホント、軽く、そして優しく、キスをした。

 それは無意識のキスであった…
 そしてそんなキスをした自分自身にもザワザワと心を一気に騒つかせてしまった、いや、違う、気恥ずかしい。

「もぉ…」
 だがそのキスは律子に対してもサプライズだったみたいで…
「早く帰りましょう」
 私の背中を押してきた。

 まさか、まさか、この私が、この俺が、こんなことを、こんなキスをするなんて…
 心が揺らぎ、本当に気恥ずかしくなってしまっていたのだ。

 そしてエレベーターでエントランスへと下りる…
 本当はそのテレ隠しにエレベーター内できつく抱き締めてキスをしようと思ったのだが、他の住人も乗り込んできたのでできなかった。

 だからそっと手だけをつないだ…
 だがそれも、なんとなく気恥ずかしい。

 エントランスから外へ出るとやや爽やかな風がスーっと吹いてきた…

「お盆過ぎたからようやく夜は涼しくなったなぁ」
 思わず、そんな気恥ずかしさを誤魔化す様にそう呟いた。

「はい、そうですね」
 律子もそのやや爽やかな風を受け、少し夜空を見上げながら応えてくる。

「大通りにでないとタクシーは捕まらないかなぁ」
 と、私は律子の手を引き歩き出していく。

「あ、そうだ」
 私は…
「腹が減ったなぁ、律子は?」
 と、ある事を思い付き、そう問うた。

「え、あ、はい、少し…」
 そう、時刻はもう午後9時半を過ぎていた。

 腹が減ったし、この夜風がなんとなく爽やかで涼しいし、そして大通りまで歩く…
 そのせいなのかもしれなかった、私はふと思い付いたのだ。

「そうだ軽くメシを食おう、近くにいい店があるんだよ」

「え?」

 本当は、本音は、少しでも早く律子のマンションに行き…
 この美しく、魅力溢れる律子を抱き、愛し、魅惑のストッキングも堪能したい。

 だが…
 さっきの、まるで若い、20代の男がする様な軽いキスをした気恥ずかしさと、なんとなくマンションに着くなり、ガツガツと律子を抱き、愛しそうな自分の昂ぶりの想いの勢いを抑える為にも…
 心にワンクッション置きたいと思ったのだ。

 少し先を曲がれば…
 そう、あの店に行こう。

 あの店へ…
 私はふと思い付いたのである。



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