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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

47 8月20日水曜日午前10時05分

 私と律子の二人は…
 8月20日水曜日午前10時05分上野駅発の上越新幹線に乗っていた。

 ……今朝、午前6時過ぎ、コーヒーの香りで目が覚めた。

「あ、起きました?」
 ふと頭をベッド上で持ち上げると…
 にこやかな笑顔と声でそう律子が声を掛けてきたのだ。

「あ、うん、コーヒーの香りがね…」
 私はそう応えながら枕元の時計に目を運ぶ。

 昨夜は未遂のままに寝落ちしてしまった律子を起こさぬ様にと、静かにシャワーを浴び、寝支度を整えて、午前零時前にベッドに横になり、そのままあっという間に寝てしまった…
 あ、いや、余りにも寝付きが早く、その前後の記憶が曖昧であったのだ。

 だが、この芳しいコーヒーの香りで目覚めるまで、深く熟睡できていた様であった…

「あ、昨夜は…そのぉ…ご、ごめんなさい…
 なんか、わたし、いつの間にかに寝ちゃったみたいで…」
 と、律子は本当に申し訳無さそうな顔と声で云ってきた。

「うん、それは大丈夫だよ…
 それにお互いに疲れていたんだから…
 余計な体力の消耗をせずにさ、かえってよかったよ…」

「え、あ、あら、もう…」
 そんな私の返しに、律子は少しはにかみ気味に呟く。

 そうなのである…
 私もそうである様に、律子にとってもこの1週間は激動といえた筈であり、見えない疲れが蓄積、いや、お互いに蓄積されていた筈なのだ。

 だからこその昨夜の律子の寝落ちであり…
 そんな寝落ちによりかえって、私の律子の美しく魅惑のストッキング脚による疼きの昂ぶりの勢いに任せた様なセックスをせずに済んで良かったのだと思われる。

 あ、いや、本当にお互いの為にも、それで、未遂で良かった筈なのだ…

「わたし昨夜午前1時頃に慌てて目覚めて……」
 そして律子はシャワーを浴び、熟睡している私を確認して、寝支度を整え、改めて寝たのだと云ってきた。

「うん、そう本当さ、だから今はすっきりさ」

「アナタにそう云っていただけるならそれで良いですけど…
 でもなぜか昨夜のわたしはいつになく昂ぶりを感じていたの…」
 少し恥ずかしそうに話してくる。

「そうなんだ、それはなんか嬉しいなぁ…
 あ、でも、きっと昨夜は少し飲んだせいもあるんじゃないのかな?」

「あ…それはあるかもですね…」





 

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