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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 48 小さな違和感

「あ…それはあるかもですね…
 で、でもぉ…
 あ、あのぉ…
 昨夜起きてからシャワーを浴びようと脱いだら…」
 そこで律子は恥ずかしくなったのだろう、言葉を詰まらせる。

「いや、それは嬉しいなぁ…
 じゃ今夜の楽しみにって事でさ…」

 なんとなくだが…
 そんな律子の羞恥心が伝わってきて、もう彼女にそれ以上話させたくない気持ちが湧き、それで話しを止めたのだ。

 その反面…
 そんな事を律子が話しをしてきた事に少し驚きと…
 そして嬉しさも感じてきていた。

 そう、嬉しさ…
 それはなんとなくそんな話しをしてきた律子に、いや、律子の中の私に対する心のカベのひとつが、いいや、その一角が緩やかに崩れ始めてきた様に感じたからである。

 そもそもが最初は律子が一方的に私の事を好いてくれて、クラブ『ヘーラー』のママとの共闘の企てにより山崎専務を利用して私に近づいてきたのであるのだが…
 それがソッコーで呆気なく、私が律子に簡単に落ちてしまったのだが…

 確かにお互いに夢中になるほどに引き寄せられ、紆余曲折があっての現在の関係に至った経緯があるのだが…

 なんとなく…
 なんとなくなのだが、どんどんと律子の色々な溢れる魅力に魅了され、惹かれ、魅せられていく私に反して…

 この律子は…

 まだまだ、私に対して完全に心を許してはいない、いや、なんとなくだが心の中に薄いのだが壁を、隔たりのカベを築いている様な…
 本当にそんな小さな違和感を感じていたのだが…

 この今朝のこの律子との会話のやり取りに…
 この小さな違和感という律子の心のカベの薄い隔たりが崩れ、いや、まだほんの一部なのだが崩れた様に感じたのである。

 いやいや、その私の思い、想いは、ここ最近の律子の…
 
 例えば先の横浜での夜であったり…

 お盆休みの突然の私の帰省先である田舎への来訪だったり…

 等々を、顧みてもそれは勘違い、的外れ、考え過ぎともいえそうなのだが…

 なんとなくなのだが…

 そう…

 なんとなく今までは、いや、さっきまでは小さいながらの違和感を感じていた。

 だが…

「軽く朝食を用意しますね…」
 そう云ってくる律子のそのやや恥らいを残した穏やか表情と、声音に…

 なんとなくだが…

 その違和感が払拭された様に感じたのである。


 

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