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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 59 ワクワクの先

 私は山崎専務だけではなく、この『経営の神様』と云われた祖父の熱い血脈のDNAを受け継いだ松下律子という存在の両方からの…
 傀儡の存在としての常務に過ぎないのかもしれない。

「なんかワクワクしてきますね」
 そんな自虐気味な想いを巡らせていると、律子はそう笑みを浮かべながら言ってきた。
 
「え、ワクワク?」

「はい、なんかワクワクしませんか?」

「え?」

 律子は目をキラキラと煌めかせてそう言ってくる。

「だってぇ、もしかしたらぁ…
 もしかしたらぁ、あの山崎のおじさまを出し抜けちゃうかもしれないんですよぉ…」

 うわ、やはり…

 やはり律子は私なんかより遥かに高い位置に既にいるようである…

「ねっ、ワクワクしちゃいますよね」

 ワクワク…
 きっと祖父の熱い血脈が沸々とたぎり始めているのであろう。

 私はワクワクではなく…
 ザワザワと騒めいてきていた。

「なんかぁ、これから先が楽しみになってきちゃってますよ」

「これから先が?」

「はい、これから先です…」

「これから、この先?」 

「はい、この先、アナタ、あ、いや、大原常務が歩んでいくのこの先が…」

「え、あ、わ、私のこの先か?」

「はい、そうですよ、そう…
 そう、わたしも一緒に付いて行きます…この先ですよ」
 律子はまた再びキラキラと目を煌めかせながら言ってくる。

「あ、う、うん、そう、そうか、一緒にか?」

「はい、もちろんです、わたしはこの先もずうっと一緒に付いて行きたい」
 そして今度は、その私を見つめてくる律子のその目からは…
 煌めきと、愛の慈悲の慈しみを感じてくる。

「ずうっと力にもなりたい…」
 そう、私は律子に愛されているのだ。

 そして律子の愛に包まれ、この先も守られていく、いや、いくのだろう…

『ずうっと力にもなりたい…』
 それにそう云ってもくれている。

 そしてそれは暗に…
『わたしの力を使ってほしい…』
 とも受け取れる。

 律子の力…

 それは熱い血脈の力…

 それを使え、利用しろ…と。



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