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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 60 本当の姿…

 その律子の力…
 その熱い血脈の力…
 それを使え、利用しろ…
 と、この律子の煌めく視線が私の心に囁き、訴えてくるのだが…

 果たして私には、そんな律子を、いや、その律子の力を上手く利用し使えるのだろうか、いいや、使いこなせるのであろうか?

 多分、それが私の尖る…という事に繋がる、通ずるのだと思うのだが…
 どんなに駿馬、名馬でも、乗りこなせなければただの駄馬になってしまう。

 果たして私にこのサラブレッドの血脈の律子という駿馬を乗りこなせることができるのであろうか?
 いや、もしかしたら、私が律子に乗られ、調教されてしまうのかもしれない。

 私はそんな想いを巡らせながら、律子の顔を眺めていると…
「大丈夫ですよ」
 と、意味あり気な、いや、かなり深い意味のある様な言葉を囁いてきたのだ。

『大丈夫ですよ…わたしが付いていますから』
 律子の目がそう私の心に訴え、囁いてきていた。

 そう、そうだ、そうだよ、私にはこの律子がいるんだ…

 彼女がいる限り…

 いや、きっと彼女が導き、この先の光明を指し照らしてくれるに違いない。

「さぁ大原常務、もう少しで到着ですよ」
 すると律子がそう言ってくる。

「あ、そう、もう着くのか」

「はい、ホント、新潟なんてあっという間ですね」

「う、うん、そうだな」
 いや、私には早かったのか、長かったのか分からないくらいに色々と逡巡してしまっていた。

 そして律子の遥かな大きさを実感してしまってもいた…

「さあ、まずは新潟名物の『へぎそば』を食べましょうよ、わたし実はお店を調べてあるんですぅ…
 あぁお腹空いたぁ…」

 そう言う律子は…
 いつもの、いや、本来の28歳の笑顔の可愛い律子になっていた。

 どちらが本当の律子なんだろうか?…

 私に抱かれ、愛されて、愉悦に喘ぐ律子…

『夢の国』で見せた満面の笑顔の律子…

 あの銀座のクラブ『ヘーラー』で見せていたホステス然とした律子…

 ここ最近新たに見せている秘書然とした理知的で凛とした姿の律子…

 そして今、この『下剋上』という野望を秘かにたぎらせ、血脈の疼きに昂ぶった目をした律子…

 果たして本当の律子の姿はどれなのだろうか?…

 

 

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