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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 61 高まる感情

「うわぁ、美味しいですねぇ」

 私と律子の二人は無事予定通りに正午過ぎに新潟駅に到着し、彼女が探して予約してあるという駅前近くの『へぎそば』の有名店で食事をしていた。

 そしてその『へぎそば』を律子が一口食べ、満面の笑みを浮かべてこんな感嘆の言葉を言ってきた…
 そんな律子の笑顔は、その28歳という実年齢よりももっとかなり若く見える。

 これもまた律子の姿のひとつでもあるのだ…
 
「え、大原常務?」
 私がそんなことを考えながらこの
『へぎそば』を食べていると…

「お口に合いませんでしたか?」
 と、心配そうに訊いてきた。

「あ、いや、違うよ、美味しいよ…
 ちょっと違う事を考えていただけだよ」
 そう慌てて否定する。

「あぁ、そうですか、なら良かったですけど…」
 
 多分、難しい顔をしていたのかもしれない…

「うん、すまん」
「いえ、お口に合わなかったのかと心配しちゃいましたよ…
 何をそんな考えていたんです?」
「え、あ、いや…」
 どれが、どの姿が、本当の律子のなのか?、なんて考えていたなんてさすがに本当の事はいえず、そんな適当な言葉を言ったのだが…

「あ、うん、そ、そう…
 そう、今日は越前屋くんも連れてきた方がよかったのかなぁってさ…」
 と、なんとか都合の良い言葉が言えたのだ。

「え、あ、はい、実はわたしもそれは考えたんですがぁ…」
 律子はそこで言葉を止め、私の顔を見つめてくる。

「うん?」
 
「え…あ、あの、でも…」
 なぜか律子は珍しく言い淀むみ、そして…

「あ、いや、実は、この新潟出張は…
 え、そ、そのぉ…
 二人で来たいな……って…」
 と、恥ずかしそうに、そして消え入りそうな小さな声で囁いてきたのだ。

「え、あ…」

「あ、す、すいません…
 でも、つい、そう思ってしまってぇ」
 本当に恥ずしそうに言ってきた。

「あ、うん、そうか、いや、実はさ…」
 その律子の様子があまりにも可愛くて、そしてその恥ずかしそうな顔があまりにも幼く見えて…
 慈しみ、愛しい…
 そんな感情が、急に心の中に湧き、思わず話しを合わせてあげたくなり…

「いや実は、私もさ…
 本音はそう思っていたんだよ」
 と、律子に合わせてあげる。

「えっ、本当ですか?」
 すると一転して、急に明るく訊いてきた。




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