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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 68 面談…

「彼、青山くんと面談をしたいから、どこか個室を貸してもらえませんか」
 そう伝え…
「それで青山くんとの面談を終えたら、永岡さんとも、ぜひ秘書抜きで話したいのですが…」
 敢えてさん付けで彼を呼び、そんなさも意味がある様に『秘書抜きで…』と付け足し…
 そして本来は永岡支社長に会うのが目的なんだ、という期待のニセのエサをワザと含ませて伝えたのだ。

 すると…
「あ、は、はい、おいキミ、あの部屋を…」
 と、永岡支社長はさっきまでの焦燥の表情からパァっと一転した明るい顔になり、そう秘書に告げる。
 
「はいじゃぁ大原常務様、こちらへ…」
 そして私と律子と青山くんの3人で秘書の案内に付いて行く。

「ぜひこの部屋をどうぞお使いください」
 そう云って秘書は戻る。

「ふうぅ」
 私は軽く吐息を漏らし、ホワイトボードが置いてあるから、小さな会議室であろう約6畳位の部屋を見回し…
「さぁ青山くん、そこに座ってくれたまえ」
 長テーブルを挟み対面を指差す。

「はい、失礼します」
 そう言って青山くんが座り…
「あ、キミも座りなさい」
 と、律子に告げる。

 だが…
「あ、いえ、大丈夫です」
 律子は凛とした声音でそう応え、私の斜め後ろに立っていた。

 すると… 
「うわぁ、さすがですねぇ…」
 感心した様に青山くんが呟いた。

 そしてそんな律子の凛とした、秘書然としたその姿勢を見て…
「さすがえっちゃんの言っていた通りの秘書さんですねぇ」
 と、続けて言ってきたのである。

「え?」

「え?」
 私と律子はそんな青山くんの言葉に2人同時に声を上げたのだ。

「えっちゃん?」
 私は続けて問う。

「あ、はい、あ、すいません、本社の越前屋朋美の事ですよ」
 青山くんは笑みを浮かべてそう告げる。

「あ、そ、そうか、越前屋、えっちゃんか」
 
「はいそうです、えっちゃんは、あ、いや、越前屋は、僕の妹と同期で友達なんで…つい…」
 
 そうであった、青山くんの妹とは同期入社の友達であり、あの男尊女卑の時代錯誤の風潮に必死に抗った仲間でもあったのだと云っていたんだっけ…
 私の脳裏には、あの屈託のない彼女の笑みが浮かんできていた。

「実はそのえっちゃんから、すっごい美人の秘書さんと、カッコよい常務さんが訪ねて来てくれるって連絡を貰ってました」
 

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