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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

75 秘書 松下律子(3)

「え、そ、そんな怖い顔なんて…」
 これが彼のペースにハマってしまっているって事なのだろう。

 続けて矢継ぎ早に攻めてくる…
「支社長の接待って事は、松下美人秘書さんは?」

「もちろん業務ではないので、同席しませんけど…」

「ですよねぇ…」

「あ、そう、青山さん、その美人秘書っていう言い方は止めてください」
 わたしは彼のペースに巻き込まれない為にもそう毅然と告げる…
 だけどその軽口に決してイヤミは感じてはこないのだが、また、それはそれで、くせ者的に感じていた。

「あ、はい、いや、すいません、でも、えっちゃんの言っていた通りに本当に美人秘書さんだからつい…」

 そしてそんな彼の軽口にはなぜか、悪い気もしてはこないのだが…
 あまりにも履歴写真との初印象との違いに戸惑いを、いや、逆に予想外の魅力を感じてきていたのである。

 それと、あと…

 危険な匂いも…

 そう、実は、オンナの扱いに慣れている様な…
 危険なオトコの匂いかしてきていた。

 いちおうわたしは、紆余曲折はあったのではあるが、あの魑魅魍魎の世界といえる夜の銀座のホステスを約一年以上務めてきたから…
 そんな男、オトコに対しての嗅覚は敏感であり、ある程度の抵抗力と上手く交わす術は心得ているつもりではある。

 だが、そんなわたしの心が、彼、この青山一也というオトコの…
 秘めた危険の匂い、ニオイを秘かに察知してきていたのだ。

「そんな美人、美人ておだててこられても、わたしには効きませんよ」
 と、軽くあしらったつもりで応えたのだが…

「あ、いや、そんなおだててるなんて…
 違いますよ、マジ、本気でそう感じているだけでぇ…」
 全くこたえ、いや、意に介さないと云うべき反応をしてくる。

「いやぁ、えっちゃんから聞いていた、うん、いや、想像以上な美人さんだから、つい、舞い上がっちゃってぇ…」
 全然、舞い上がっている様には見受けられない。

「そんな、越前屋さんからどう伺っていたのかは存じませんけども…
 とにかくその美人秘書という言葉はお止めになっていただけますか」
 と、敢えて、毅然と、そしてわざとそうへりくだった感じで敬語で答えていく。

 じゃないと、いや、油断してしまうと…
 そんな彼の軽い軽口のペースに飲まれてしまう気がしていたから。

 
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