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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 76 秘書 松下律子(4)

「そんな、越前屋さんからどう伺っていたのかは存じませんけども…
 とにかくその美人秘書という言葉はお止めになっていただけますか」
 と、敢えて、毅然と、そしてわざとそうへりくだった感じで敬語で答えていく。

 そして…
『わたしはアナタに警戒しているのよ…』
 と、いう意味をも込めていた。

「あ、はい、すいません、これからは言いませんです」
 素直なのかふざけているのかは分からない、そんな微妙な反応である。

 だがわたしは、とりあえずこの会話はもう終わり、という意味を込め…
「では、異動の時期等は常務様から人事を通して、追って連絡入ると思いますから…
 でも多分、早々な時期になるかと…」
 と、儀礼的に言い放つ。

「えぇ、あ、はい、うーん、なんかツレないなぁ」
 だが彼はワザとなのか、粘りなのか?
 そんな感じで応えてくるのだ。

「え、ツレないとは?」
 わたしは更に儀礼的に、そして彼に付け入る隙を与えない意味でもそう凛とした態度と声音で受け応えをしていく。

 なぜなら、なんとなくであるが、フッと油断をしてしまうと彼に…
 懐に入られてしまう様な気がしていたし、わたしの心がそう警戒を発してきていたから。

「え、だって松下さんは本社の常務さんの秘書さんなんですよね?」
 
 それに、彼の、いや、青山さんが今から云わんとしている事も分かってはいたから…

「はい、わたしは吸収した方の『○○商事』本社から出向の大原常務の専属秘書になります」
 と、敢えてそう伝えたのだ。

「うん、はい、それもえっちゃんから聞いて知ってますよ…
 でも、という事は、自分はこれから保険会社の本社にカムバックする訳になるから…」
 だが、彼、青山一也は全然気にしていない…
 いや、これも彼の別面でのひとつの魅力なのかもしれない。

「だから、これからは本社でよく顔を合わせるお付き合いという事になりますよねぇ」

「あ、はい、そういう事にも…なりますね」

「ですよねぇ…
 実はですね…
 あのですね…
 本当の本音はですね…」

 そしていよいよ彼、青山一也という株式トレーダーの、そして資産運用のスペシャリストとして以外の…
 本領を、いや、本当の彼が姿を表してきた。

「実は自分が大原常務さんのお誘いをふたつ返事で受けたのはね…………」



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