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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

77 秘書 松下律子(5)

「自分がこのお誘いをふたつ返事で受けたのはね……」
 いよいよ彼、青山一也が本当の顔を覗かせてきた。

「ひとつはもちろん本社に返り咲きしたいっていう理由とですね…」
 彼はそう言いながら、わたしの顔を見つめ…

「もうひとつは… 
 アナタ…松下さんですよ…」
 その目をキラりと輝かせて言ってくる。

「え、わたしですか?」

「はい、アナタの美人さに心が揺れ動いたからです」
 
「え……ふ…………」
 わたしはそをな彼のその、まるでいかにもナンパ師みたいな軽口に呆れてしまう、いや、逆に、呆れを通り越して笑ってしまった。

「あ、マジですよ、マジですから、そんな笑わないでくださいよ」
 と、彼はわたしのそんな反応に慌てて食いついてくる。

「え…だって…
 何をそんなバカな事を…」
 そう、あまりにも軽々しく、バカな話しといえる。

「ええ、そんなぁ、マジですよ、マジにそう思ったんですから」

「……………」
 呆れてしまい、応えようがなかった。

「いや、だって、えっちゃんから聞いていたせいもあったし…
 じゃぁ、どれほどの美人さんなんだかって思っていたら……………」

 ……予想を遥かに超えていたから………
 と、彼は言ってきた。

 そして…
「ぜひ、こんな美人さんと一緒に仕事をしたたい、大原常務と仕事をしていきたい…って、本当に思ったんですよ」
 その言葉の中身は余りにも軽々しい、そしてよくあるナンパの口説き言葉の常套句といえるのであるが…
 意外にも彼の目は真剣名光を帯びている様に見える。

「ええ、そんな軽い、軽々しい言葉を並べられてもぉ…
 なんか信憑性っていうかぁ……」
 果たして真剣なのか、ウソなのか、判断が付きにくい。

「だって極端な話し、資産運用の運営や株式トレーディングなんてその気になれば今の時代、どこでも、つまりは本社じゃなくたってこの新潟支社でだって出来ますよ」

「あ、はい、それは…」
 それは分かる…
 確かに何処に居たってその気になれば出来る時代になっていたから。

「でしょう、そうなんですよ、それにまた都内に引っ越すのも面倒だし、こっちは食いもんも酒も美味いしね…」

 確かにそうかもしれない…

「だけどこうしてふたつ返事の即答した理由のひとつは、本社待遇の色気とそしてもうひとつは…」
 

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