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　6　嫉妬…

「さぁ、あっちん、帰ろう」
　そんな不惑の想いに揺らいでいるわたしの傍らで、越前屋さんが明るく言ってくる。

「え、なに、わたしはゆかり室長と帰るのよ」
　すると伊藤さんが笑みを浮かべながら、そう応え…

「えぇ、そんなぁ」
　越前屋さんがすかさず反応してきた。

「当たり前でしょう、わたしは今はゆかり室長のお部屋にお世話になってるんですからぁ…
　ねぇ、そうですよねぇ」
　
「うん、そうね…」
　と、その問いかけにゆかりさんが明るく応え…

「えぇ、ひどぉい、ゆかり室長までぇ、いじめないでくださいよぉ」
　そんな越前屋さんの明るい声音の、まるでコントの様な会話のやり取りが、一瞬、わたしの不惑な想いを紛らわせてくれる。

　本当に、この越前屋さんの明るい存在感には希少価値がある…

　そしてその会話を聞いていて、わたしは…
『えっ、やっぱり、嫉妬なの？…』
　ハッと、心に浮かんだのだ。
　
　嫉妬って…

　誰に？...

　松下秘書に？

　似ている伊藤さんに？

　え、いや…

　そしてわたしは、一瞬浮かんだ自身の想いに、ドキンとしてしまう…

　えっ、ゆ、ゆかりさんに？…

　まさか、わたしは……
　このゆかりさんに…嫉妬しているのか？

　まさか…

　ゆかりさんに…嫉妬って………

　そう想い巡らせた瞬間に、心の中の小さな波紋が…

　大きな波となり、揺らぎ、ウネリだした。

　どうしてゆかりさんに？…


　わたしはそんなコントのような会話を交わしている三人の姿を眺めながら…
　逡巡していく。


　ゆかりさん…

　武石健太…

　大原常務…

　伊藤敦子…

　そして、松下秘書…

　想い浮かぶ名前を脳裏に列挙し、思考を巡らせていく。

　すると、この五人が…
　佐々木ゆかりさんという女性、オンナという存在を中心に、線で結ばれているということに気付いたのだ。

　この五人、いや、越前屋さんという希少な存在を加えれば…六人。

　そしてわたしを入れての七人は…

　皆、ゆかりさんを中心に…

　線で結ばれ、広がっている。

　果たしてその線は…

　嫉妬か、憧れか、因果なのか…