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シャイニーストッキング

第16章 もつれるストッキング5  美冴

 5 揺らぎの波紋…

 わたしだったら、こんな、サバサバなんてできやしない…

「じゃ、皆さん、帰りますかぁ」
 そう言ってくる愛しい健太の姿を見ながら、そう思っていた、そしてわたしの心にも小さな揺らぎが…
 それは嫉妬なのか、安堵なのかわからない。

 もしも今、この健太の浮気を知ってしまったならば、果たしてわたしはどうなる、いや、どう思うのだろうか?

 まだ健太と付き合い始めてから僅か、約十日あまり…
 その間、わたしは複雑で不思議な因果の流れの縁とはいえ…
 過去の未練の決着とはいえ…
 端からみたら『和哉』というオトコと浮気をしてしまった。

 あ、いや、それ以前に、わたしという存在の自我の覚醒と存続と、維持という無意識からの想いとはいえ…
 大原常務というオトコをゆかりさんから奪い盗ろう、と、一瞬とはいえ思ったことがあった。
 
 そしてそれは、ほんの少しとはいえ、健太との時間が被っているわけで…
 だからって、果たして健太を許せるのだろうか?…
 いや…
 それは否…である。

 だが、もしも、これらの想い、思いが緩衝材として中和するならば…
 つまりは、自分自身の罪悪感を自覚するのならば…
 開き直れるのかも…しれない。

 それならば、ゆかりさんのあのサバサバ感…
 伊藤さんに対する揺らぎの目…
 それらの正体が、少しは理解できる。

 でも…

「さぁ、美冴さん、帰りましょう」

 この愛しい、いや、愛しいはずの健太の姿、笑顔を見ての…
 今、わたしの心に小さい揺らぎの波紋の正体は………なんなのだろうか?

 嫉妬心…誰に?

 安堵…何に対して?

 揺らぎと騒めきの想いが心にゆっくりと、波紋のように広がってきていた…




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