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シャイニーストッキング

第16章 もつれるストッキング5  美冴

 9 自己嫌悪…

 全てが『佐々木ゆかり』というオンナを巡るその流れに…
 『ひがみ』と『羨ましい』という想いの感情が当てはまる。

 あっ、いや、違う…全部だ。

 それは…

 憧れ…
 羨望…
 劣等感…
 嫉妬心…

 それら全ての感情が、渦巻く因果となり…
『佐々木ゆかり』という存在感への憧憬として結ばれていく。

 そしてその全ての想いから『ひがみ』という感情が生まれたのだと思う。

 それはゆかりさんから…
 認められたい…
 以前のように憧憬の目で見られたい…
 また……愛されたい…
 という願望の裏腹な想いからなのだ………と。

 
 わたしは一気に、そんな自分自身の心の小ささの自覚をし、そして罪悪感が沸き起こってしまい…

「じゃぁ、みんな帰りますかぁ…
 ねぇ、美冴さん…」
 と、ゆかりさんからそう声を掛けられた瞬間に…
 慌てて目を逸らしてしまったのである。

 いや、違う…
 それはこの『ひがみ』から生まれた自己嫌悪から自覚した、そんな自分の心の小ささが恥ずかしくなり…
 目だけでなく、顔さえも見れなくなってしまったから。

 そしてもしかしたら…
 目が合った瞬間に、そんな自分の心の小ささが、ゆかりさんに、一瞬にして見抜かれてしまうのではないのか…
 と、『ひがみ』という感情の想いがバレそうで、こわくなってしまったのだ。

『佐々木ゆかり』というオンナは、それくらい理知的で、聡明だから…

「あ…う、うん、はい…」
 だからわたしはうつむきながら、そんな曖昧に応えた。

「ほら、ちゃんと美冴さんを送って行くのよ」
 だが、ゆかりさんはそんなわたしの想いには気付かずに、いや、想像するはずもなく、逆に少し揶揄気味に…
「明日の夜があるんだから…ね」
 と、笑顔で健太にそう言ってくる。
 
 その笑顔がまた魅惑的で、更にわたしの心を騒つかせてしまう…

「はいはいわかってます、じゃあ美冴さん帰りましょうかぁ…」
 そう健太は応え、わたしの背中をそっと押してきた。

「あ…う、うん……」
 わたしはなんとか顔を上げ、ゆかりさんを見ると……
 もう越前屋さんと伊藤さんの三人で仲良く並び、出口に向いて歩いていた。

 その後ろ姿を見つめながら…

 心に沸いたこの自己嫌悪というジレンマに陥っていく…

 

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