シャイニーストッキング
第16章 もつれるストッキング5 美冴
10 ジレンマ
「じゃあ、お疲れさまぁ、また、明日ねぇ…」
ゆかりさんたち三人はビルの前の通りでタクシーに乗り…
わたしと健太は新宿駅西口に向かって歩いていく。
「帰りに何か食べて行きましょうよ」
「え…あ…」
今の、この不惑の想いではとてもそんな気持ちにはなれず…
「う、うん、で、でも…なんか疲れちゃったから…」
と、曖昧に、決して今の心情を悟られたくなくて、うつむき、小さく応えた。
だって…
この『ひがみ』からの自己嫌悪という感情の素因が解ってしまった今…
ううん…
もし今夜、この自己嫌悪という不惑の延長のままに一緒に過ごしてしまったならば…
きっと溢れる彼への愛情の波により、心の防壁を崩し、いや、壊し、決壊させてしまい…
判明した『ひがみ』の要因である嫉妬心という自分の感情から…
醜い、37歳という中年オンナの醜態を晒してしまうのではないか…
いいや、晒してしまうに決まっている。
だって…
健太は『ひがみ』の要因のひとつであるから…
そして…
健太を愛しているから。
今夜、ここで別れて…
一人でこの不惑な騒めきの夜を…
今夜さえ乗り切れれば…
きっとリセットできて、また、明日、違った目で、気持ちで、健太に会えるはずだから。
ううん、明日の朝に…
この健太の愛しい笑顔を見れれば…
全ての不惑をリセットできる……はずだから。
だから…
「うん…ごめんね…
なんか疲れちゃったし、それに、明日の夜の決起集会もあるからさ…
今夜は………帰るね」
わたしは務めて明るく、そして、今のこの不惑の心情を悟られないようにと、しっかりと意識をして健太の目を見つめ、そう言った。
「あ…は、はい、わかりましたぁ…
ちょっとだけ寂しいけどガマンします」
健太は例の…
年上キラーの自称の如くの、甘い声音と笑顔でそう返してくる。
「うん、ホントにごめんね」
わたしはすっかりその健太に後ろ髪を引かれる思いになってしまったのだが…
本当に、本気で醜態を晒したくはないから、心を鬼にし、きっぱりと断った。
そして…
「じゃ、また、明日ね、おやすみ」
と、出来るだけ甘く囁き、健太の頬にスッとキスをし、踵を返し、ラッシュの新宿駅の雑踏の中へと小走りに飛び込んでいく。
今夜は、振り向かなかった…
「じゃあ、お疲れさまぁ、また、明日ねぇ…」
ゆかりさんたち三人はビルの前の通りでタクシーに乗り…
わたしと健太は新宿駅西口に向かって歩いていく。
「帰りに何か食べて行きましょうよ」
「え…あ…」
今の、この不惑の想いではとてもそんな気持ちにはなれず…
「う、うん、で、でも…なんか疲れちゃったから…」
と、曖昧に、決して今の心情を悟られたくなくて、うつむき、小さく応えた。
だって…
この『ひがみ』からの自己嫌悪という感情の素因が解ってしまった今…
ううん…
もし今夜、この自己嫌悪という不惑の延長のままに一緒に過ごしてしまったならば…
きっと溢れる彼への愛情の波により、心の防壁を崩し、いや、壊し、決壊させてしまい…
判明した『ひがみ』の要因である嫉妬心という自分の感情から…
醜い、37歳という中年オンナの醜態を晒してしまうのではないか…
いいや、晒してしまうに決まっている。
だって…
健太は『ひがみ』の要因のひとつであるから…
そして…
健太を愛しているから。
今夜、ここで別れて…
一人でこの不惑な騒めきの夜を…
今夜さえ乗り切れれば…
きっとリセットできて、また、明日、違った目で、気持ちで、健太に会えるはずだから。
ううん、明日の朝に…
この健太の愛しい笑顔を見れれば…
全ての不惑をリセットできる……はずだから。
だから…
「うん…ごめんね…
なんか疲れちゃったし、それに、明日の夜の決起集会もあるからさ…
今夜は………帰るね」
わたしは務めて明るく、そして、今のこの不惑の心情を悟られないようにと、しっかりと意識をして健太の目を見つめ、そう言った。
「あ…は、はい、わかりましたぁ…
ちょっとだけ寂しいけどガマンします」
健太は例の…
年上キラーの自称の如くの、甘い声音と笑顔でそう返してくる。
「うん、ホントにごめんね」
わたしはすっかりその健太に後ろ髪を引かれる思いになってしまったのだが…
本当に、本気で醜態を晒したくはないから、心を鬼にし、きっぱりと断った。
そして…
「じゃ、また、明日ね、おやすみ」
と、出来るだけ甘く囁き、健太の頬にスッとキスをし、踵を返し、ラッシュの新宿駅の雑踏の中へと小走りに飛び込んでいく。
今夜は、振り向かなかった…
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