シャイニーストッキング
第16章 もつれるストッキング5 美冴
19 揺らがる波紋…
『うん、わかった、そうよね、また明日から頑張るわ…』
わたしの波紋に揺らぐ心の水面がゆっくりと、穏やかに、静まっていく……
カラン……
だが…
「いらっしゃいませ、お一人ですか?」
この来客が…
『あっ…』
「あぁ、うん、あれ、オーナーは?」
この声が…
『えっ…』
また直ぐに、心の水面を激しく揺らがせる。
そう、それは……
「はい、オーナーは今日は私用で、まだ暫くは戻らないかと…」
スタッフの言葉に…
「あ、うん、いい、大丈夫だよ、カウンターいいかな?」
そう応えるその声は…
「どうぞ…」
「あぁ、ありがとう」
その声はそう応え…
わたしの左側に導かれる。
この席は、入り口からは観葉植物の鉢で陰になっていた…
そしてわたしはサッと、右側の壁の方を向く。
どうやらその声の主は、このやや照明を落とした薄暗さのせいなのか、まだわたしの存在には気付いていないみたい…
「とりあえず、ワイルドターキーのロックを…」
と、オーダーした。
その見た目よりは意外に高い声音と、それに相乗するような優しい響きが…
ザワザワと…
ようやく静まった心の水面を、また、ゆらゆらと波紋を広げてくる。
そして…
「ふぅ……」
彼はそんな吐息を、いや、小さな思いため息を吐き…
かチャ、シュッ…
咥えたタバコに、ジッポーライターで火を点け…
「ふうぅぅ…」
大きく、ゆっくりと煙を吐く。
その漂うタバコの匂いに…
亡きゆうじと同じ銘柄のタバコの匂いが…
ゆらゆらと漂い、わたしに纏わり、鼻孔を刺激し…
心の水面の揺らぎをうねりへと変えてくる。
わたしはその漂う煙を透かし、その奥に、ゆうじの残穢の存在感を、再び強く感じ…
そしてそのうねりが、ザワザワとした騒めきという波紋を波たたせてきた。
「うふ…
あら、ずいぶんな……ため息だこと……」
声を掛けるか逡巡したが…
この騒めきの正体の意味に、少し嫌みに、少し意地悪気味に、囁かずにはいられなかったのだ。
「えっ……
あ、あ、蒼井…くん……か?……」
だが、彼は…
大原常務は…
この不意な声に驚き、いや、もしかしたら…
わたしがここに居ることを…
予想していたのかもしれない………
『うん、わかった、そうよね、また明日から頑張るわ…』
わたしの波紋に揺らぐ心の水面がゆっくりと、穏やかに、静まっていく……
カラン……
だが…
「いらっしゃいませ、お一人ですか?」
この来客が…
『あっ…』
「あぁ、うん、あれ、オーナーは?」
この声が…
『えっ…』
また直ぐに、心の水面を激しく揺らがせる。
そう、それは……
「はい、オーナーは今日は私用で、まだ暫くは戻らないかと…」
スタッフの言葉に…
「あ、うん、いい、大丈夫だよ、カウンターいいかな?」
そう応えるその声は…
「どうぞ…」
「あぁ、ありがとう」
その声はそう応え…
わたしの左側に導かれる。
この席は、入り口からは観葉植物の鉢で陰になっていた…
そしてわたしはサッと、右側の壁の方を向く。
どうやらその声の主は、このやや照明を落とした薄暗さのせいなのか、まだわたしの存在には気付いていないみたい…
「とりあえず、ワイルドターキーのロックを…」
と、オーダーした。
その見た目よりは意外に高い声音と、それに相乗するような優しい響きが…
ザワザワと…
ようやく静まった心の水面を、また、ゆらゆらと波紋を広げてくる。
そして…
「ふぅ……」
彼はそんな吐息を、いや、小さな思いため息を吐き…
かチャ、シュッ…
咥えたタバコに、ジッポーライターで火を点け…
「ふうぅぅ…」
大きく、ゆっくりと煙を吐く。
その漂うタバコの匂いに…
亡きゆうじと同じ銘柄のタバコの匂いが…
ゆらゆらと漂い、わたしに纏わり、鼻孔を刺激し…
心の水面の揺らぎをうねりへと変えてくる。
わたしはその漂う煙を透かし、その奥に、ゆうじの残穢の存在感を、再び強く感じ…
そしてそのうねりが、ザワザワとした騒めきという波紋を波たたせてきた。
「うふ…
あら、ずいぶんな……ため息だこと……」
声を掛けるか逡巡したが…
この騒めきの正体の意味に、少し嫌みに、少し意地悪気味に、囁かずにはいられなかったのだ。
「えっ……
あ、あ、蒼井…くん……か?……」
だが、彼は…
大原常務は…
この不意な声に驚き、いや、もしかしたら…
わたしがここに居ることを…
予想していたのかもしれない………
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える