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シャイニーストッキング

第4章 絡まるストッキング3 大原本部長と佐々木ゆかり部長

 79 美冴の想い ④

「そう、恥ずかしながら、わたしはそれまで、全てに恵まれて育ち、ほぼ競争もなくきたので他人を羨んだり、憧れたりした事がなかったの…」

「……」

「だから、初めての嫉妬、嫉妬心を覚えたの…」

「……」

 なんてことなの…
 本当に返す言葉がみつからない。

 今まで嫉妬した事がなかったなんて…

 なんて…

 なんてことなのだ…

「最初はその感情が何だかなのもわらなかったわ、だって嫉妬した事がなかったから…」

「……」
 それはそうだろう、約30年間生きてきていて、嫉妬した事がないなんて…

 ある意味凄いことだ…

 よほど自分自身に自信があるのか、苦労知らずなんて本当に羨しい…

 わたしなんて…

 わたしなんて学生時代は、劣等感、そして日々競争の中にいたから、嫉妬心なんて日時茶飯事だった気がする…


「だからそれが嫉妬心とわかるまでは大変だった、突然、心が昂ぶって、抑えが効かなくなって…」
 
 突然、心が昂ぶって、抑えが効かなくなる…
 それは今のわたしの不安定な自律神経の突然の昂ぶりと似ている。

 ドキ、ドキ、ドキ、ドキ、ドキ、ドキ…

 そしてわたしは今も、似たような昂ぶりを感じていた。

 ああ、ヤバい…

 ヤバいかも…

 ドキ、ドキ、ドキ、ドキ、ドキ、ドキ…

「それからなの、その頃からなの…
 美冴さんに彼の事を、彼を奪られちゃうかもって過剰に意識をし始めちゃったのは…」
 わたしは頷いた。

 そうよね、確かにあの頃から頻繁に、ことある事に、わたしを見つめてきていたものね…

「そして今度はその過剰な意識と共に、更にゆかりさんの事を見るようになってしまったの…」

「あ…」
 あ、そうか、そういう事か…
 わたしは思わず頷いた。
 だが、まだ、その頃は、彼の、大原本部長の存在等は意識さえした事がなかったのだ。

 何しろ、まだ、あの頃は『黒い女』として全ての欲望に自制をし、達観していたのだ…

 ましてや男に興味など全くなかったのだから…
 だから彼を奪るなんて事はあり得ないし、考えること自体が無かったのである。

 ただ、当時のゆかりさんの目には気づいていた、そしてその目の裏にあるゆかりさんの潜在な想いにも…

 わたしは気づいていたのだ…

 

 

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