テキストサイズ

シャイニーストッキング

第4章 絡まるストッキング3 大原本部長と佐々木ゆかり部長

 88 心の迷宮 ⑧

 あ…

 しかし、そう声を掛けてきた美冴さんの様子がすっかり変わっていたのである。

 その彼女の顔は、さっきまでとは真逆の困惑気味な、そしてやや恥ずかしそうな、羞恥心の色を浮かべていたのだ。
 先ほどまでのあの妖艶な、妖しく淫靡な艶気はすっかり消えていたのである。


「電話、出なかったの…」

「はい…」
 なんとなく出る気になれなかったのだ…
 と、彼女ににそう目で語った。
 そして恐らくわたしのその目も、さっきまでの興奮と欲情の昂ぶりの色はすっかり消えていると思われる。

「あ、わたしも…」
 わたしも立ち上がり、トイレに向かう。


 え、やはり…

 そしてトイレで確認してみると、やはり濡れていたのだ。

 なんてこと…

 濡れている…

 わたしはこの事に、恥ずかしさと、衝撃と、困惑的な想いが湧いてきたのである。

 美冴さんに…

 美冴さんに対して欲情してしまった…

 抱かれたくなっていた…

 愛されたくなっていた…

 あの艶やかな唇が欲しくなっていた…

 そして…

 わたしを奪って欲しくなっていた…

 さっきまでの、まるで迷宮に迷い込んでしまっていたといえるような、二人の不思議な時間を想い出してきていた。

 ザワザワ、ドキドキ、ズキズキ…

 まだ、僅かに疼きの余韻が残っている。


 さっきまでの…

 さっきまでのあれは…

 あれはなんだったのだろうか…

 わたしすっかり美冴さんのあの濡れた目に、欲情の目に、あの妖艶な妖しい淫靡な艶気に呑み込まれてしまっていたみたい…

 まるで…

 まるで、彼女の心の中にある迷宮に迷い込んでしまっていたみたい…

 ザワザワ…

 まだ、心がザワザワしていた。

 ザワザワが治まらない…





ストーリーメニュー

TOPTOPへ