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シャイニーストッキング

第4章 絡まるストッキング3 大原本部長と佐々木ゆかり部長

 94 お友達…

 歩いているとゆかりさんの歩みが緩くなり、わたしの方に振り返る。
 わたしはすかさず彼女に謝ろうと近寄った。

「美冴さん…」
 すると彼女が先に声を掛けてきたのだが、なぜかその感じがはにかむような表情なのだ。

「美冴さん、わたし…お願いがあるの…」
 そしてその様子が、なんとなくだが恥ずかしそうなのである。

「えっ…」

 お願いって…なんだ…
 
 怒って、呆れているんじゃないのか…

「美冴さんに…お願いがあるの…」

 えっ…

「あの…」
 ゆかりさんは下を向く。

「あのぉ…」

 えっ…

「わたしの…
 わたしの…
 お友達に…
 お友達になってくれませんか…」

「えっ…」

 えっ、何を…

 何を云っているの…

「わたしのお友達に…
 なってくれませんか…」
 わたしは彼女が何を云っているのか意味がわからなかった。

「えっ…」

 何を云っているの…

「お友達になって欲しいの…」
 恥ずかしそうな顔をしながらそう云ってわたしを見つめてくるのだ。

「え、それは…」

 それは…

 怒っていないのか…

 呆れていないのか…

 お友達って…

 どういう意味なの…

「え、何を…」

「あ、ごめんなさい、突然で…」
 意味がわからないですよね…
 やや苦笑いしながらそう呟いてきた。

 わたし達はいつの間にかに、銀杏並木通りの手前まで歩いてきていた、そして傍らにあるベンチに彼女は座る。
 そしてわたしにも座れと、隣を指差ししてきた。
 彼女の組んだ脚が、外灯の灯りに美しく照らされる。

 ああ、きれいな脚…
 わたしはなぜか、このタイミングでそんなトンチンカンな事を想ってしまう。

「ごめんなさい、突然で、訳わからないですよね…」
 そう云う彼女に、わたしは黙って首を振る。

 訳がわからないのはわたしの方なのだ、さっきのワインバーで、突然に、自律神経の暴走のスイッチが入ってしまい、淫らな、淫乱なメス女のわたしをさらけ出してしまったのである。
 しかしゆかりさんはわたしのこの自律神経の暴走の事など知る由もないのだ。

 だから本当は呆れて、戸惑って、怒っているはずなのに…

「あの…」
 そしてわたしはさっきのワインバーでの事を謝ろうと口を開く。

「本当に…お友になって欲しいの…」





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