
シャイニーストッキング
第5章 絡まるストッキング4 和哉と美冴1
72 5年前、あれから…(58)
なんだ、どういうことだ…
わたしは恐る恐るリビングのドアを開ける。
「あら、美冴さん、お帰りなさい、パートだったのかしら…」
そこに旦那とお姑さん、義母がいたのだ。
「あっ、お義母さま…
はい、パートです…」
マザコン旦那の母親は確か60歳、やせ型で見るからに神経質そうな顔をしている。
そして父親、義父を完全に尻の下に置き、実家を牛耳っていた。
つまりそれは、代々続いている本家であり大地主でもある、旦那の実家の一族全てを支配下に収めているという事実でもあるのだ。
「それはお疲れさまね…
とりあえずここに座ってくれるかしら…」
義母はそう言ってリビングテーブルの自らの対面にある椅子を指差してきた。
ちなみにマザコン旦那は義母の隣に座っていた、そしてひと言も発せず、しかも目も合わせようともしない。
「あ、はい…」
この義母とマザコン旦那の雰囲気に、嫌な胸騒ぎしか湧いてはこなかった。
「これ…」
そして義母はその嫌味で神経質な目をギラリと光らせ、趣味の悪い、いかにも成金センスなデザインのシャネルのバッグから紙を一枚取り出してテーブル上に置いたのだ。
あっ…
それは離婚届けの用紙であった。
「………」
わたしは黙ってその紙を見つめる。
そうか、そういうことになったのか…
「理由は云わなくても分かりますわよね…」
「………」
分かることは、判る。
たが、あまりにも突然であり、なによりも、わたし達夫婦の間で一切の話し、話し合いもまだしていないのである。
約半年前…
わたしが掛かっていた医師から不妊症を告げられ、不妊治療を受ける相談を彼にしようとした瞬間から、彼は
貝になったのだ…
突然、貝の様に殻を閉ざし、一切口を開かずに自分の仕事部屋に布団を移し、それ以来会話が全く無くなったのだ。
わたしはその間、何度となく話し掛け、意思疎通をトライしたのだが、一切の反応は無かった。
だが、全く、夫婦間での話し合いもしようともせずに、こうして義母を間に立て、いきなりのこの離婚の宣告である。
動揺でもない、怒りでもない…
ただ、ただ、わたしは呆れてしまった、いや、呆れてしまっていたのである。
なんだ、どういうことだ…
わたしは恐る恐るリビングのドアを開ける。
「あら、美冴さん、お帰りなさい、パートだったのかしら…」
そこに旦那とお姑さん、義母がいたのだ。
「あっ、お義母さま…
はい、パートです…」
マザコン旦那の母親は確か60歳、やせ型で見るからに神経質そうな顔をしている。
そして父親、義父を完全に尻の下に置き、実家を牛耳っていた。
つまりそれは、代々続いている本家であり大地主でもある、旦那の実家の一族全てを支配下に収めているという事実でもあるのだ。
「それはお疲れさまね…
とりあえずここに座ってくれるかしら…」
義母はそう言ってリビングテーブルの自らの対面にある椅子を指差してきた。
ちなみにマザコン旦那は義母の隣に座っていた、そしてひと言も発せず、しかも目も合わせようともしない。
「あ、はい…」
この義母とマザコン旦那の雰囲気に、嫌な胸騒ぎしか湧いてはこなかった。
「これ…」
そして義母はその嫌味で神経質な目をギラリと光らせ、趣味の悪い、いかにも成金センスなデザインのシャネルのバッグから紙を一枚取り出してテーブル上に置いたのだ。
あっ…
それは離婚届けの用紙であった。
「………」
わたしは黙ってその紙を見つめる。
そうか、そういうことになったのか…
「理由は云わなくても分かりますわよね…」
「………」
分かることは、判る。
たが、あまりにも突然であり、なによりも、わたし達夫婦の間で一切の話し、話し合いもまだしていないのである。
約半年前…
わたしが掛かっていた医師から不妊症を告げられ、不妊治療を受ける相談を彼にしようとした瞬間から、彼は
貝になったのだ…
突然、貝の様に殻を閉ざし、一切口を開かずに自分の仕事部屋に布団を移し、それ以来会話が全く無くなったのだ。
わたしはその間、何度となく話し掛け、意思疎通をトライしたのだが、一切の反応は無かった。
だが、全く、夫婦間での話し合いもしようともせずに、こうして義母を間に立て、いきなりのこの離婚の宣告である。
動揺でもない、怒りでもない…
ただ、ただ、わたしは呆れてしまった、いや、呆れてしまっていたのである。
