
シャイニーストッキング
第5章 絡まるストッキング4 和哉と美冴1
74 5年前、あれから…(60)
その小切手に記された金額を見て驚いた。
高級車が余裕で買える金額なのだ。
「それは私共の誠意ですから…」
義母はそう冷たく言い放ってきた。
「誠意って…」
その言葉に一瞬にして怒りが湧いてきてしまい、思わず反論しようと思ったのだが…
止めたのだ。
この旦那のお盆休みの間にこれらを用意してきた…
と、いう事は昨日今日ではなくて、わたしのこの不妊症問題が判った直後辺りから、このマザコン旦那はわたしとではなくこっそりとこのマザコン母子で話し合い、いや、違うであろう
恐らくこれは、この離婚をするという事は、このお姑、義母の意思であるに違いない…
だから今更、怒りに任せて話しをしてもラチが明かないし、話すだけ無駄なのである。
「わかりました…」
わたしはそう言い放ちさっさとその弁護士の書類にも署名捺印をし、この小切手を受け取ったのだ。
この後色々絡まれても問題があるし、向こうがお金で解決したいのだから、これはこれで遠慮なく貰うしかなかった。
そしてこれを受け取ったこのたった今、この瞬間に、目の前にいるこのマザコン旦那とマザコン母子とはスッパリと縁を切ったのだ、いや、縁が切れたのである。
「あ、そうだ…」
わたしは立ち上がり彼を、旦那を見る。
だが旦那は、それでも頑として、頑なに、わたしのことは見ようとはしなかったのである。
「荷物は、今週中に…」
そこまで言って、わたしは踵を返してそのまま部屋を出た。
これ以上話しどころか、一緒の空気さえも吸いたくはなかったのである。
カツ、カツ、カツ、カツ…
マンションのエントランスを、わたしのイラついたヒールの音が響いていた。
そしてわたしはマンションを出て通りでタクシーを拾う。
普段乗っているクルマは旦那名義であるのだ、それにこの瞬間からクルマの愛着は消えてしまい、わたしにとっての穢らわしい存在に変わってしまったのである。
しかしまだこの時は、不思議と怒りや哀しさは湧いてはこないでいた。
ただ、ただ、呆れた思いしかなかったのである。
あ…
そうだ、和哉だ…
和哉に逢いたい…
そうだ、約束していたんだ…
脳裏には和哉の顔が浮かんできていたのである。
きれいな…
穢れのない…
和哉に逢いたい…
その小切手に記された金額を見て驚いた。
高級車が余裕で買える金額なのだ。
「それは私共の誠意ですから…」
義母はそう冷たく言い放ってきた。
「誠意って…」
その言葉に一瞬にして怒りが湧いてきてしまい、思わず反論しようと思ったのだが…
止めたのだ。
この旦那のお盆休みの間にこれらを用意してきた…
と、いう事は昨日今日ではなくて、わたしのこの不妊症問題が判った直後辺りから、このマザコン旦那はわたしとではなくこっそりとこのマザコン母子で話し合い、いや、違うであろう
恐らくこれは、この離婚をするという事は、このお姑、義母の意思であるに違いない…
だから今更、怒りに任せて話しをしてもラチが明かないし、話すだけ無駄なのである。
「わかりました…」
わたしはそう言い放ちさっさとその弁護士の書類にも署名捺印をし、この小切手を受け取ったのだ。
この後色々絡まれても問題があるし、向こうがお金で解決したいのだから、これはこれで遠慮なく貰うしかなかった。
そしてこれを受け取ったこのたった今、この瞬間に、目の前にいるこのマザコン旦那とマザコン母子とはスッパリと縁を切ったのだ、いや、縁が切れたのである。
「あ、そうだ…」
わたしは立ち上がり彼を、旦那を見る。
だが旦那は、それでも頑として、頑なに、わたしのことは見ようとはしなかったのである。
「荷物は、今週中に…」
そこまで言って、わたしは踵を返してそのまま部屋を出た。
これ以上話しどころか、一緒の空気さえも吸いたくはなかったのである。
カツ、カツ、カツ、カツ…
マンションのエントランスを、わたしのイラついたヒールの音が響いていた。
そしてわたしはマンションを出て通りでタクシーを拾う。
普段乗っているクルマは旦那名義であるのだ、それにこの瞬間からクルマの愛着は消えてしまい、わたしにとっての穢らわしい存在に変わってしまったのである。
しかしまだこの時は、不思議と怒りや哀しさは湧いてはこないでいた。
ただ、ただ、呆れた思いしかなかったのである。
あ…
そうだ、和哉だ…
和哉に逢いたい…
そうだ、約束していたんだ…
脳裏には和哉の顔が浮かんできていたのである。
きれいな…
穢れのない…
和哉に逢いたい…
