テキストサイズ

シャイニーストッキング

第6章 絡まるストッキング5 和哉と健太

 2 記念日

「ま、どっちにしてもゆかり次第ってことさ」
 そうなんだ…

「悪かったな、なんか、ゆかりに深い男の闇の世界に踏み入れさせてしまったみたいでさ…」
 今度は間違いなく自虐気味にそう呟く。

「いえそんなことは…」
 そんなことはない、わたしは貴方の為にも、わたし自身の為にも、そしてこれからも貴方に付いていくと決めたのだ…

「そんなことはないです、本部長の為にも絶対成功させますから」
 そしてその成功の自信は既にある、そして確かな手応えも感じてはいる。

「ま、そういう事で武石健太の扱いもゆかりに任せるからさ…」
「はい…」
「それより、午後イチの記者会見、本社に見に来いよ」
「あっ、そうですね、わかりました」
「自分の目で、記念すべき第一歩、第一声を確認しなよ…」
「あ、はい、わかりました、伺いますね…」

 そうか、今日からが正式な第一歩か…

 もしかしたら、いや、絶対に今日からわたしのビクトリーロードのスタート記念日にするんだ…
 わたしは大原本部長の電話を切りながらそう心に誓ったのだ。

 1997年8月8日。
 絶対に記念日にするんだ…

 そしてわたしはコールセンター部に向かう。
 実はコールセンター部は業務内容上、損害保険部門に限っては年中無休の24時間態勢で、その性格上このお盆休みの長期休暇はレジャーが増えるという事で逆に繁忙期になるのである。
 だから社員同士でもローテーションを決めての休日出勤となるのだ。
 わたしと、二人の主任、営業課の三人の計六人でそのローテーションを決める会議を始める。

「基本的に今回はわたしは都内にいますし、出掛ける予定もないのでいざという為にも常時待機で構いません」
 それに、9、10日は例の「新規業務」の案件でテレビ局に会議にいく予定もある…
 という事で話し始め、ローテーションを決めていった。
 そしてその会議も11時には終わり、わたしは健太を呼び付ける。

「今から本社の記者会見に行くから同行ね…」
 「は、はい…」
 健太は不思議そうな顔をしながら返事をしてきた。

 あっ…
 その時、わたしはチラと蒼井美冴さんと目が合ったのだ。

 昨夜はありがとう…
 わたしは目で彼女に語り掛ける、と、彼女はニコリと微笑んできた。

 そう、友達になったんだわ…
 胸が昂ぶる想いがこみ上げてくる。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ