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　4　バレた事実

　確か昨夜は、この隣にいるゆかり姫と食事に出掛けていた筈なのだ。
　たが、このゆかり姫の様子を覗う限りは昨夜の二人には何の問題も無かったように思われる。
　いや、彼女達の朝の挨拶を遠巻きで見た限りでは、むしろ仲良さそげに見えたのだ。

　だったらあの寝不足気味な表情は何なのか…

　このお盆休みの問題といい、彼女の寝不足気味の様子といい、どうも心が揺さぶられてしまうのであった。
　そしてもう一つあった。

　なぜに、今日の記者会見に俺がゆかり姫に同行をするのか…

　胸騒ぎがしてくるのである。

　まさか…

　まさかバレたのか…

　まさか甥っ子問題がバレたのか…

　別に隠した訳では無かった、だが、わざわざ言う事でも無かったのだ。
　
　やはり蒼井美冴さんを主任に推したのはまずかったか…

　だが事実、彼女は至極優秀であり、画期的なプログラムという切り札も持っていた。
　主任という責任者のポジションは当たり前な位に優秀なのである。
　だがそれらの件については何も訊かれないし、問いただせられてはこない。
　しかしこの記者会見の同行は、そんな意味があるように思えてならないでいた。

　ある意味、まな板の上の鯉のようである…

　それとも自分から云わなくちゃダメなのか…
　ゆかり姫の無言がプレッシャーであったのである。

　間もなく本社に着く直前であった。

「健太、アンタ、山崎専務の甥っ子なんだって…」　
　突然云ってきた。　
　俺はそれまでのプレッシャーでKO寸前であったのだ。

「はいっ、今まで黙っていてスイマセンでした」
　俺は観念の言葉を吐いた。

「別に怒ってないわよ…」
　だが、ゆかり姫の目は笑ってはいない。

「それに、蒼井美冴さんの主任の件も…」
「スイマセン、でしゃばったマネをして、まさか、叔父さんが…」

「だから怒ってないって…」
　ここでようやく彼女の目が笑う。

「これからはわたし達と専務の間を上手く橋渡ししてよ…」
「はっ、ははぁっ」
　俺はタクシーの中でなかったら、彼女の前にひれ伏していた想いであった。

「とりあえず、今日、山崎専務に上手く執り成してね…」
　そんな事は云われなくても分かっている。
　ましてや叔父さん、いや、山崎専務はこの大原本部長と佐々木ゆかり部長姫の事はかなりの高評価をしているのだ。