テキストサイズ

シャイニーストッキング

第7章 絡まるストッキング6 和哉と美冴2

 32 あの頃と同じ悩み

「うん少しだけ分かった…
 で…じゃあ悩みを訊こうか…」

 そうなのである、まだ肝心のその悩みを訊いてはいないのであったのだ…

「じ、実は…」
「うん…」

「教師と公務員つまりは市役所か県庁職員なんですが、どちらが良いかなって…」

「あら、まあ…」
 わたしは思わず、内心、力が抜けてしまった。
 それは和哉には悪いがどれだけ凄い相談内容なのかと少し緊張していたからである。

 いや違うわ、和哉にとってはもの凄い重要な事であり、選択肢なのだ…

「教職課程は…」
「勿論履修済みです、中学、高校の資格です…が」
「公務員は…」
「10月頭に県庁の試験があります…
 実は…」
 実は…
 親が、教師か公務員になれって…

「うん…」
 親としたら最もな意見といえる。

「でも本当に僕自身には将来の事なんて、つい、昨日までは考えられなくて…」
 その和哉の言葉にはドキッとしてしまう。

 そ、そうか、わたしのせいなのか…

 わたしを探す事がこの大学生活のまずは第一優先順位であったからか…

「大学入学当時から親に教職課程の履修は口煩く云われていたから、流れでなんとなく履修していたんですが…」
 教師なんて、実感なくて…

「でも、教育実習はどうだったの…」
「あ、はい、それが、意外にも楽しかったんです…」

 わたしはまじまじと和哉の顔を見る。

 うん、確かに、教師合ってるのかも…

 それにわたしは少しだけそんな和哉の悩みを訊いて、ワクワク感が湧いてきていたのである。

 それは、その迷いが、悩みが、わたしのあの大学四年生の当時と同じだったからであったから…

 わたしも教師の資格を持っている、そしてわたしの両親は元中学教師、姉も、姉の旦那様も中学教師なのであった、それに祖父も、つまりは、わたしの家族は皆教師、教師の家系なのである。
 しかし、わたしは高等部時代と大学時代の短期留学により、外国と、海外旅行という魅力に魅了されてしまい、教師か、旅行会社、海外添乗員等の二者択一に悩んだのであったのだ。
 そしてわたしは結果的には旅行会社就職を選択したのである。

 あの頃のわたしと同じだ…

「実は、母親の遠縁が相模原市で私立高校の経営者で…
 来春から採用してくれるっていうんです…」

 私立高校の教師なんて最高じゃないか…




ストーリーメニュー

TOPTOPへ