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シャイニーストッキング

第7章 絡まるストッキング6 和哉と美冴2

 34 人生の道標

「じゃあ、教職の道に進んで欲しいなぁ…
 和哉先生…
 いや、高校教師の
 奥山和哉先生の姿が見たいかなぁ…」
 わたしは努めて明るく、そう言ったのである。

「やっぱり…教師ですかぁ…」
「うん、そう、教師かなぁ…
 意外に和哉には合ってるのかも…」
 そう言ったのだ。

「美冴さんも教職持ってるんですよね…」
「うん…
 あれっ、昔、云ってたんだっけ…」
「はい…」
 頷いてくる。

「訊いていました…」
 和哉はそう言いながら上を向く。

「散々迷って、旅行会社就職に決めたって…」
 話していたのか…

「ああ、やっぱり先生かぁ、先生がいいのかぁ…」
 すると和哉はそう呟いてきたのである。

「うん、奥山和哉先生…
 案外、似合ってるかなってぇ…」
「実は、本当に教育実習楽しかったんです…
 その時、あ、僕は、意外に向いてるのかも…って思ったんですよ」
 和哉は明るく、そう話してきたのだ。
 少しプレッシャー、いや、重し、重りが外れたかの様であったのだ。

 これで責任果たせたのかな…
 和哉の明るい顔を見ながらわたしはそう思っていたのである。

 これで、この五年間の和哉の想いを果たす、遂げさせる事ができたのか…

 これでいいのか…

「美冴さん、ありがとうございます」
 そう想いながら和哉の顔を見ていると、いきなり感謝の言葉を言ってきたのだ。

「えっ、そんな、ありがとうだなんて…
 こちらこそだわ…」
「いえ…
 本当に美冴さんと再会したいという五年間の想いが遂げられたし…
 そして、この先の将来の、人生の最初の岐路の道標を指し示してくれたんです…
 感謝しかないです…」

「そ、そんなぁ…」
 逆に、わたし自身が恐縮してしまっていたのである。

「ああーっ、これで、なんかぁ、本当にスッキリしたぁ」
 と、和哉は明るく言ってきたのだ。

 あっ…
 だが本当に和哉の顔付きが変わった感じがするのである。

 そう、まるで憑きものが取れたかの様な感じなのだ…

 それはそうなのかもしれない…

 なぜならば、五年間の重し、重さが、今、完全に外れたのであるからだ。

 わたしを捜す…
 と、いう、この和哉の五年間の青春の、大学生活のテーマが、目標が、想いを遂げたのであるから、いや、果たせたのであるから。

 明るい和哉になった…



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