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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 7 新たなる出世欲

「はい、初めてお目に掛かります…
 山崎専務の元で働かせて貰っております、大原浩一と申します」
 と、私はほぼ90度の角度で頭を下げて挨拶をする。
 この序列の世界は完全なる縦社会なのであり、そしてまた、第一印象、挨拶が非常に大切なのだ。

「うん、楽にしなさい、君の事は山崎くんから訊いているから…」
「は、以後、お見知り置きをお願いし致します」
 私は再び、深々と頭を下げる。
 そして無事挨拶を済ませたから私は沈黙し、直立不動となった。

「山崎くん中々良い記者会見だったじゃないか…」
「はい、ありがとうございます」
 そして松本副社長と山崎専務の二人での軽い談笑が少し続く。

 以前にも山崎専務から少し訊いてはいたのであるが、今回の吸収合併の仕手戦はどうやら金融関係に強いこの松本副社長の仕掛けによるモノなのだそうである。

 そして会社としても、これからこの先の時代を見据えての、新しい試みの為の礎の一つとしてどうしても保険会社が欲しかったらしいのだ…

 そしてその松本副社長の先鋒としての山崎専務であり、その山崎専務の傀儡としての私という存在なのであった。
 
 だが、傀儡は今だけだ…

 私は佐々木ゆかりという優秀なパートナー得て、最近、急にそう考える様になったのだ、そしてつまりは、また、再び、新たな出世欲が湧き起こってきたという事なのである。

 佐々木ゆかりが居れば、それは何とかなるのではないか…
 そしてなぜか、そんな確信の無い自信が、最近私の心に囁いてくるのだ。

「ああ、そうだ…」
 そんな事を山崎専務の傍らに立って考えていたら、突然私に松本副社長が声を掛けてきたのである。

「大原くん、君もゴルフに行こう…」
「おお、それはいい…」
 と、山崎専務が言う。

「は、ゴルフ…ですか?」

「ああ、うん、そうだ…」

 今日の午後からの出発で、長野県の軽井沢にある我が社所有のリゾートホテルのゴルフ場に2泊3日でゴルフに行くのだという…
 それに、いきなり今、私が松本副社長から誘われたのである。





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