テキストサイズ

シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 71 鋭い勘

『今夜も、明日の12日も、アレですねぇ… 
 そうかぁ、丸々暇になっちゃう訳なのかぁ…』
 
「えっ…」

 私はゆかりの突然のそんな言葉にドキッとしてしまった。

「あ、い、いや、暇って…」
 返す言葉が続かない。

 どうしてゆかりはこうも勘が鋭いのだろうか…
 昨夜の行動も、きよっぺとの出来事も…
 そして今夜も、これからの私の欲望の想いも…
 全てお見通しなのだろうか…

 実は本当に、私のどこかに盗聴器を仕掛けているんじゃないのだろうか…
 
 ドキドキとしてしまい胸の高鳴りが止まらなくなってきていた。

『あ…でもアレかぁ…』
「あ、アレって?」

『アレですよぉ…
 でもぉ久しぶりの帰省になるのだから、昔の懐かしいお友達とかと遊べますもんねぇ…
 確か…3年振りの帰省でしたよね?』

 ある意味図星ではあるのだが…
 懐かしいお友達って?…
 果たして嫌味なのか?
 素直に受け取ってよいのか?…

 そのゆかりの言葉の意味を一瞬考えてしまうのである。
 
 普通、どう考えても、ただの鋭い勘からのゆかりの言葉なのは間違いないのだとは内心分かっているのであるが…

 なぜか、ドキドキとしてしまっていて、迂闊な返事が出来ない…と、いう怖さがを感じていた。

「あ、うん、3年振り…だ」
『その前は?』
 
 確かその前に帰省したのは…

「オヤジの葬式の前後だから…
8年前になるかな」
『そうなんだぁ、意外と帰らないモンなんですねぇ』

 まだ、ドキドキは鎮まらない…

 ゆかりは一体、何が言いたいんだろうか…
 真意を図りかねてしまって、迂闊に返事が出来ないでいた。

『でしたら、昔のお友達なんかとは全く会ってないって事かぁ』
「あ、うん、そう…」

『だったらぁ、今夜とかぁ、明日とかぁ、会えるチャンスあるんじゃないんですかぁ?』

 やはり、私の考え過ぎ、怖がり過ぎであったのだ…

 やっぱりゆかりは…
 私に対しての優しい思いやりの言葉を掛けてくれているだけなのである。

 それを…

 この、心に積み重ねてしまっているゆかりに対する裏切り行為という罪悪感が、こうした余計な、被害妄想的な、勘繰り的な想いを生み出してしまい、こんなネガティブな、マイナス思考になってしまっていたのである。

 罪悪感からの被害妄想なのである…





ストーリーメニュー

TOPTOPへ