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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 77 消せない火

 今夜、このまま、この地元に居たならば…

 あの想い…
 
 それは、きよっぺへの想い…

 20年振りの再会の青春への想い…

 すなわち、オスの、あの、いやらしい本能を、押さえる自信が全くないからである。

 つまりは…

 さっきゆかりが危惧した
『あまりにも羽目を外し過ぎて…
 懐かし過ぎる昔の元カノと、焼けぼっくいに火が付く…』状態は必然なのだ。
 いや、既に昨夜、火が付いてしまっていたのである。
 そしてその火を消す為には、ゆかりが来るか、私が行くかしか方法はないのだ。

 なぜならば…
 今の私には、そんな自分を押さえる自信が全くないからであり、もう既に、オスの本能には抗えることが出来ない事が分かっているからなのである。

「うん……わかったよ…」

『本当にごめんなさい
 ぐちゃぐちゃでごめんなさい…
 ああ…恥ずかしいわ…』
 と、ゆかりは小さな声で、そう呟いたのだ。

「いや、ありがとう
 逆に、嬉しいよ、嬉しかった」

『えっ、嬉しいって…』 
「ゆかりの気持ちが…
 良く伝わってきたからさ」
『えっ……』
「だって…
 今までそんなこと言ってくれたことなかったじゃないか」
『え、あ、まあ…そうかも…です』

「なんか、ゆかりの愛を強く感じられて嬉しいよ」
 と、私は少し照れながら呟いた。
 そして内心、我ながらこんな言葉が言えるんだ…と、少し驚いていたのだ。

 嘘…ではないが、嘘も方便か…

『や、なんか、恥ずかしい…です』
 と、ゆかりは本気で照れ草そうに囁いた。

 ゆかりがこんな言葉を言う様になった、いや、変わってきている…

 そして私は、少しウソが上手く、そしてズルくなってきている…

 ズルい…

 つまりは『嘘も方便』であり、それを使い分けし、使いこなす…
 それが、尖るということに通ずるのだ。

 どっちにしても…

 この地元に今夜居るという事は、つまりはきよっぺと逢瀬をする…
 いや、彼女と逢わないという事が押さえ切れないという事であり、それは、逢わないという選択肢はない…
 と、いう事なのである。

 そして…

 また一つ、罪悪感が、高く、積み重なるという事なのだ…






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