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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 78 自虐と罪悪感

『本当にごめんなさい
 ゆっくりと愉しんでくださいね…』
 そうゆかりが言ってきた。

「あ、うん
 でも、本当に、あまり羽目を外さないように気をつけるよ」
 そう自然に、自分の口からそんな言葉がスッと出て、内心驚いてしまう。

 いや…

 私は最低だ…

 自虐の念が湧いてくる。

 そして罪悪感も…

『あ、そうだ』
「うん、なんだ?」
『ご法事で親戚の方々とも久しぶりにお会いするんですよね』
「あ、うん、ま、そうなるな…」
『実は…
 記者会見前に少し思っていて、忙しくて言いそびれてしまっていたんですが…』

 うん、なんだ?…

『髪の毛…
 そう、髪の毛を、そろそろ切った方が良いかなって…』

「あっ…」
 確かにそうだ…と、納得してしまう。
 実は私自身も、そろそろ切り時だと思っていたのだが、忙しくてつい、忘れてしまっていたのである。

『ご親戚にも会うわけですし、地元だから、本当に久しぶりに会うお友達もいるんじゃないんですか?』

 確か、昔、ゆかりに幼馴染みの
『宮本まさやん』の店の存在の話しはした記憶があった…

 確かにそうだ…

 髪の毛を切ろう、手入れしないと…

「ああ、ありがとう、そうするよ」
『あ、はい、ぜひ、身だしなみは大切ですから…』
 そして最後に、また明日にでも電話する…と、話して電話を切った。

 思わぬ会話になってしまった…
 
 だが思いもよらずに、ゆかりの変化、本音が分かった、いや、伝わる感じの会話が出来たのだ。

 やはりゆかりは丸くなったのだ…

 そして私は、ゆかりに愛されている…

 それが痛いほどに、伝わってきた…

 だが…

 いくら、ゆかりから愛されている想いが伝わってこようとも…

 もう…

 焼けぼっくいに火が付いてしまっているのだ…

 もうそれは、消せないほどに燃えてしまっている…

 そしてオスのいやらしい本能は、押さえ切れないし…

 いや、押さえられない…と、いう事なのである。

 もう…

 ダメなのだ…

 無理なのだ…

 そして…

 遅かったのだ…





 ブー、ブー、ブー…

 すると再び携帯電話が着信した。

「あっ…」

 その着信は…



 律子からであった…





 

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