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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 79 律子との電話 ③

 ゆかりと話しながらタクシーは西口駅前ロータリーに到着した。
 この駅は在来線、新幹線が南北に走っており、またあと二つのローカル線、一つは茨城県を東に向かう路線、そしてもう一つは栃木県を西に横断し群馬県の県庁所在地までに至る路線が交差する、いわゆるターミナル駅なのである。
 また、駅の出口は東西二カ所に別れており、ちなみにきよっぺのマンションは、東口側の最近区画整理が進んでいるエリアにあった。
 
 そして律子からの着信は、ゆかりとの会話を終え、タクシーを降りたタイミングであったのだ。

 うわ、なんてタイミングの着信なんだ…
 さっきのゆかりといい、この律子といい、毎度ながら本当にこの二人からは、まるで盗聴器かGPSでもこっそり付けられているかの様なタイミングで着信があるのであった。
 
 そして、そのくらいゆかり、律子の二人は勘が鋭いともいえるのだ…


「もしもし…」
 そして私は、あまりの、そのタイミングの良さに少しドキドキしながら、駅前ロータリーにあるベンチに座りながら電話に出る。
 
『律子です…今、電話大丈夫ですか?』
 律子はいつもそんな感じで話してくるのだ。

「うん、大丈夫だよ」
 
 私はやはり、こうして律子の声を聞くと心が高鳴り、昂ぶってくるのである。

 昨夜、きよっぺを抱き、愛した時に、見た目は全く正反対に近いのだが、内面的な二人の共通点があることに気付き、ある程度のこうした高鳴りや昂ぶりには理解が少しできたのだが…
 やはり、なぜか律子の声には、格別に心が魅せられるのであった。

 子供の時に良く見ていた大好きなアニメの登場人物の声優の声に似ているせいなのかもしれない…と、以前、思った事があった。

 だが、こうして、昨夜のきよっぺとの共通点を感じた今、なんとなくだがそれとはまた少し違った高鳴りと昂ぶりに感じるのである。

 そしてもう一つ…

 さっきのゆかりとの会話に感じた様な罪悪感や心の揺らぎが全く感じないし、湧いてこない、だが、違った意味での騒めきを感じる。

 それはやはり…

 私自身の中での優先順位というか、本命の女はあくまでもゆかりであり、律子は浮気相手としての女という立場、位置関係、順位であるという事なのであろうか…

 私は律子の声を電話口から聴いた瞬間に、そんなことを考えていた。



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