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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 80 律子との電話 ④

『あの、お母さまの御容態は?』
「ああ、ありがとう、とりあえず大丈夫なんだ…」
 と、返し、さっきのゆかりにも話した様に、担当医師との会話の内容を律子に伝える。

 ゆかりといい、この律子といい、二人の美女からこれ程心配してもらうなんて、 私は幸せモノだなぁ…と、感じてしまう。

『あぁ、そうですか、それは不幸中の幸いで…
 良かったですね』
「ああ、そうなんだよ、ありがとう…」

『実は、わたしの祖母も…』
 今から約10年前に心筋梗塞で亡くしたから、余計に反応してしまったのだ…と、言ってきた。

 ああ、だからなのか…

 昨日のハイヤー内での会話で、なんとなく敏感な反応だなっ、て感じていたから合点がいったのだ。

『でも、この後をしっかりとケアしなくてはですね…』
「あ、うん、そうなんだが…
 結局は弟夫婦に任せるしかないからさ…」

『そうですか…、あのぉ…』
 と、律子は突然訊いてきた。

『あのぉ…
 そこって、あの、○○ゆうえんち、が、ある場所ですよね?』

「ああ、そうだよ」
 さっきのゆかりと同じことを訊いてきたのである。

「やっぱり、来たことあるのか?」
『はい、確か小学生時代に遠足と、あと家族でも一度行った記憶があります』
 と、話してきた。

 確か律子は埼玉県の県庁所在地出身と言っていた…
 このエリアは普通に遠足で来るのである。
 
 だが、家族とも来たとは…

『あまり、はっきりとは覚えてませんけど…確かプール、あ、そう、流れるプールもあった…』

「ああ、プールあるよ」
 プールはそこそこ人気がある、そして冬はスケートリンクに変わるのだ。

『あらぁ、懐かしいわぁ…』

 あっ…

 そんな律子の感嘆の想いの声を聞いた瞬間であった。

 きよっぺ…

 そう、昨夜のきよっぺが連想されたのである。

 やっぱり、二人は見た目は違えど、内面的には似ているんだ…

 だから…

 律子からは、初めから微妙な、ときめきを感じてきていた…のか。

『あの…』
 そう考えていると、律子が恐る恐る訊いてくる。

『確か、ご法事は13日って仰ってましたよね?』
「ああ、そう、父親の10回忌なんだよ…」
『そうでしたよね…』

 その律子の訊き方に、ザワザワと騒めきを感じてくる…

 そうか、そうだよな…

 

 
 

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