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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 112 きよっぺ…⑤

 そして、その失意のままに私は野球部を退部して、不良の道へと陥っていったのであった…

 だが、その当時は、まだまだ心の真ん中ではきよっぺが存在していたし、彼女不在の空虚感を思いっ切り引きずっていたのである。
 そして、そんな流れの4月下旬のゴールデンウィークになろうという月末であった。

 きよっぺから
『逢いたい…』 
 との、誘いの連絡が来たのだ。

 もしかして、また、定期的に逢える様に帰ってきたりしてくれるのか?…

 この半年間、怪我を理由にきよっぺに甘えっきりで、あんな酷い扱いをしていた事など全く気にせずに、そんな淡い、そして間抜けな想いを秘めながら、午後4時、約束の駅東通り公園へと向かう。

「あ…」
 既にきよっぺは、すっかり散ってしまった桜の樹の下のベンチに座っていた。

「すっかり髪の毛を伸ばしたんだね」
 彼女は、当時の不良の定番であるリーゼント風の私の髪型を見て、そう言ってきたのだ。

「あ、うん、もう野球部辞めたから…」
 そんなぶっきら棒の感じで応える。
 そして目の前に居るきよっぺは、体育大学とはいえ、すっかり東京の大学生っていう感じに洗練された感じになっていて、眩しく感じ、少しドキドキとしていた。

「約3か月振りだね、足の怪我は?」

「ああ、うん、ダメ…」
 精一杯、突っ張って応えるのだが、なぜか、彼女の顔をちゃんと見れないでいたのだ。

 ひがみ、嫉妬はもちろんあったのだが、なぜか彼女が眩しく見えて、そしてその反面、余計に自分が情けなく、また、ガキ臭く卑下した感じになってしまっていて、まともに目を合わせられないでいたのであった。

 いや、眩しく感じていたし、もう、なんとなく完全に別々な道を歩き始めてしまったんだな…
 と、その時、強く感じてしまっていたのである。

 そして…

 やっぱり、完全に終わってしまったんだ…
 と、確信した。

「あのさ…」

 すると、きよっぺが話してきたのである…

「こっぺ、ごめんね…
 もう付き合えなくなっちゃったの…」
 大きな瞳から涙を溢しながら、そう呟いてきたのだ。



 その時浮かんできたのは…

 空虚感、虚無感、絶望感…

 そして…

 後悔であった…







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