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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 113 あれから…⑥

『こっぺ、ごめんね…
 もう付き合えなくなっちゃったの…』
 それは当時の私に対して完全に別れを告げる言葉であった…

「あの時さぁ、あの公園でわたしが言った言葉を覚えている?」
 きよっぺは私の腕の中でそう訊いてきた。

「ああもちろんだよ忘れられないさ…」
「あ、あぁ、そうよね、ごめん」

「いやもう23年も前のことさ…」
 そう呟く。

「あの言葉はさぁ…」
 そして話しを続けてくる。

 それは、あの時言わなかったけれど、入学して直ぐ彼氏が出来ていたのよ…
 そう、大学の先輩の彼氏が出来ちゃったの…
 あの頃のこっぺの失意と絶望感は十分過ぎるほど痛感し、痛切していたんだけどわたしには重過ぎたの…
 どうにも出来ない無力感に襲わていたの…
 そんな時に東京での新天地、つまり新しい大学生活はこっぺには悪いけれど、わたしにはワクワクして、ドキドキして、夢と希望に溢れていたの…
 もうあの時は、わたしの心がこっぺから逃げ出したかったし、いや、逃げ出した…かな。

「うん、それは、分かっていた…
 いや正確には、後から分かった…かな」

「ごめんね…」
 その先輩がすごく大人に見えたの、いや、大人に感じたの…
 そして、あの時のわたしの気持ちを全て受け入れてくれたと感じてしまったのよ…

「そして…
 赤ちゃんが出来てもいい…とさえ、思ってしまったのよ」
「えっ、そ、それは…」
「うん、そう…
 その時の彼が、最初の男で…
 元旦那なの…」

「そうなんだ、旦那なんだ…」

「うん、でもさ…」
 そう呟き、顔を上げ、私の目を見つめてきたのである。

「その時の気持ちの中での最初の男は…
 こっぺだったのよ…
 ただ、セックスを、ううん、ただ、シてなかったってだけで、本当にわたしの中での最初の男は、いや、優先順位は、こっぺが一番だった…」
 そう言って、涙を溢す。

「あ、ありがとう…」
 素直にきよっぺのその言葉が嬉しかった。
 そして驚いてもいたのである。

 まさか男性経験が、元旦那と、昨夜の私だけだったとは…

 そんな、きよっぺの純粋な想いに感動をしてしまう。

「だからあの時、心からこっぺに悪くて…
 そして、謝りたかったの…」
「うん…」

 確かにあの時、きよっぺにハッキリと別れを告げられてショックではあったのだが…

 


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