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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 115 あれから…⑧

「いや、オレこそごめん…」
「ええー、なんでこっぺが謝ってくるのよぉ、謝るのはわたしの方なのにぃ…
 あの頃こっぺに素直にヤらせておけばってさ…
 不妊症が分かった瞬間に本当に、直ぐにその事が思い浮かんだ位なのよぉ」

 私はきよっぺがそう言ってきた瞬間…
「あ…ん…」
 彼女を抱き締め、そしてキスをした。


 いや、口を塞いだのである…
 それは、彼女に、きよっぺに、これ以上話させたく無かったから。

 もうあれからの事なんて…
 今となっては必要なかったのである。

 そして今私の心の中に浮かんできていた思いは…

 あの怪我をして絶望し、途方に暮れていた時期の、きよっぺに対して甘えた非道への…

 謝罪と後悔であった…

 そして懺悔か…

 しかし、今、きよっぺはこうして私の腕の中で抱かれている、いや、私は彼女を抱いているのである。

 やはり、運命の再会であったのだ…

 きよっぺとの青春の忘れ物の全てを取り戻させてくれる、その為の、何かの不思議な導きなのかもしれない。

 それには…

 この腕の中で涙を流している彼女を、あの頃以上の愛情で、包み、抱いて、愛するしかないのだ…
 
「きよっぺ…」
 そう心の中で想い、抱き締め、名前を囁き、唇を、舌を吸っていく。

「あ…ん…」

 愛していた…

 気持ちの昂ぶりは、すっかりあの頃に還っていたのだ。

 愛している…

 ただ、あの頃は…

 愛なんて、解りもしなかった…

 ただ、あの頃は…

 ヤりたいだけだった…

 そしてあの頃は、愛なんて解らなくて構わなかったのだ。

 あの頃は、ただ、ヤる…

 ヤりまくる…

 その先に、その延長線上に愛というモノがあったのだと思うのだ。

 それを今、こうして、実感していた…

 だが、今は、解るのだ。
 愛というモノがよく解るし、必要だし、無くてはならないモノなのだ。

 愛の、愛情の、延長線上にヤる…

 その先にセックスというモノがある…

 そしてそういう事が、この年齢になって、ようやく理解出来た、いや、理解できる様になったのである。

 その想いは…

 この目の前の、腕の中に抱いている彼女を見て、よく解った、いや、分かったのだ。

 そしてそれが、歳を経る…
 という事なのであることも、よく分かったのである。



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