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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 158 騒めく想い

 私は10回忌の法事が終わった次の日の14日に、甥っ子、姪っ子をプールにでも連れて行こうと思ったのである。

「兄貴なんか悪いね…」
 と、お昼休みで戻って来た弟が声を掛けてきた。

「おう、ご苦労様だな、大丈夫だよ、気にするな」
「うん、ありがとう…
 夏休みでもさぁ、なかなか連れて行けなくてさぁ」
 これは自営業、商売をしていると仕方が無い事なのである。

 そして弟夫婦と一緒に昼食を食べながら明日の10回忌の法事の打ち合わせをし、ついでに軽く相続の話しもした。

「えっ、それは…」
 相続は一切放棄するから…
 と、伝えると弟は驚きの声を上げてくる。

「うん、いや、全部お前に譲るからさ…」
「でも…」
「いや、実はオレは最近かなり出世しちゃってさぁ、相当稼いでるんだよ…
 それに以前の家を処分して株式投資したら…」
 かなり儲けてしまってひと財産築いてしまった…
 と、そう説明をした。

「いや、でもさぁ」
「いいんだよ、お前が家業の跡を継いでくれたんだし、それに相続やら相続税やら面倒だからさ…」
 これは本音であった。

「じゃあ、そういうことでオレはお袋のお見舞いに行ってくるよ…」

 明日の法事では口煩い親戚も数人やってくるのである、できたらそんな相続の話しもスッキリと事前に決めておきたかったのである。

 それに、弟が家業の跡を継いでくれたんだ…
 全部譲るのが当然なのだ、と思っていた。

 そして私は母親のお見舞いに出掛ける…

 午後からは一気に気温が上がり、かなり蒸し暑くなってきていた。
 そしてそんな真夏の東の空には巨大な入道雲が、モクモクと湧いてきていたのだ。

 夕立が来そうだなぁ…
 私は病院に向かうタクシーの後部座席から空を見上げて、そう思っていた。

 それにしても…

『元カノの1人や2人は…』

 そして昨夜のゆかりのそんな電話の声が蘇ってきていたのである…
 そしてまた再び、なんとなく胸がザワザワと騒めいてきていたのだ。






 

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