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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 160 逡巡する想い

 だとすると?…

 この見知らぬ携帯電話番号は仕事関係からなのだろうか?
 だが、今はお盆休み中だし…
 心の騒めきはますます高鳴ってきていた。

 そしてそんな想いを逡巡している間にタクシーは駅前に到着してしまった。
 とりあえず駅前ロータリーでタクシーを降りると、昨日気付いたノンの美容室のあるビルが目に入ってくる。

 あの着信はノンではないのか…
 だが、昨日も、今日の学童野球のグラウンドでも電話番号は交換はしていないのだ。

 やはり仕事関係からの着信なのか?…

 そしてもう一つ、きよっぺからの着信にもかなりの心が騒ついてきていた。

 決してきよっぺを避けるつもりは無い…

 だが、果たして、一昨夜、昨夜、今夜と三日連チャンで逢っても良いのであろうか…
 実際、いや、おそらくは何だかんだ云ってもこの帰省中しか彼女とは関わらない、いや、東京に戻ったならば忙しくて関わる暇が無い事は明白なのである。

 だから、せめて実家に滞在しているあと約三日間は逢っても良いのではないのか…
 と、そんな想いも湧いてきているのだが、判断をしきれずにいたのだ。

 どうしたら良いのか?…
 この着信に折り返しをしたならば、今夜も逢う、そして逢瀬となるのは必然なのである。
 そう逡巡しながら駅前をぐるりと見回していると、デパートが目に止まったのだ。

 あ、そうだ、プールに行くから水着を買わねば…
 そしてこの逡巡の時間稼ぎにもなるし、気分転換にもなるであろうと閃き、私は水着を買いに駅前デパートに入る。
 そして当たり触りのないオーソドックスなデザインのサーフパンツを買い、デパート内の喫茶店に入った。

 さて、まずはきよっぺへの折り返し電話をどうしたものか?…
 私はアイスコーヒーを飲みながら考えていく。

 昨夜は愛し合った後に私は泊まらずに帰ったのだ、そしてその後きよっぺは一人となり、いったい何を考えたのであろうか…
 
 当然、私とのこれから先の事を考えるということは必然である…のだが、彼女は理知的で聡明な大人の女性なのである。
 今回の流れ、お互いの立場、環境等々、冷静に考えられる筈なのだ。

 すると、やはり、今、私が帰省中の僅かな短いこの期間中、この数日間の関係であるという事を当然のように考えた、いや、考えているに違いない…

 


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