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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 168 空白の時間

 今、目の前に立っているノンの姿は、正に大人の艶気全開といえるファッションであったのだ。

「い、いやぁ、あのノンが…」
 そう思わず感嘆してしまう。

「もお、わたしは39歳なのよぉ」
 と、ノンは苦笑いしながら、だが、嬉しそうに言ってきた。

「あ、あぁ、そうだよな、そうだったな…」
「あの頃は16、17歳…
 あれからもう、23年も経ってるんだからねぇ」

「あ、う、うん、そうだな…」
 その空白の23年間が、ノンを、のぞみをこんな大人の艶気を醸し出している女に変えていたのだ。

 あの明るく、可愛らしかったノンが…
 と、私は本当に感嘆してしまっていたのである。

「じゃあ、行きましょうよ」
「あ、うん、そうだな」
 と、彼女に促されて喫茶店を出た。

「どこに連れて行ってくれるんだい」
 既にこの街は私の地元と言えない位に発展、進化しているのだ。
 私にとってはこの懐かしい駅前も、まるで浦島太郎状態の様に様変わりをしているのである。

「うんとねぇ、お寿司屋さん」
「ほぉ、寿司かぁ、いいな」
「でしょ、最近出来た新しいお寿司屋さんがあるのよ、なんでも大将が銀座で修行してたんだってぇ…」

「銀座かぁ…」
 その思わぬタイミングで出てきた
『銀座』というワードが、すかさず律子の事を思い浮かばせてきたのだ。

 そういえばまた今夜当たり電話が掛かってきそうだなぁ…
 と、思わず腕時計に目を向ける。

 時効は午後5時過ぎ…

 なんとなくそろそろ電話が掛かってきそうな予感がしてきていた。

 おや、私は律子からの電話を待ちわびているのか?…
 思わずそう想ってしまう。

 本当に不思議な魅力のある女だ…
 
 そんな事を考えていると、その寿司屋に着いてしまった。
 なんとその寿司屋は、この駅前の一本裏通りにあったのだ。

「すぐ裏だったんだ」
 看板を見上げながら呟いた。
 そして私達は店に入る。
 するとノンはしっかり個室を予約していたのであった。

「ビールかな?」
 そう訊いてきたノンに頷く。

 まさか、ノンとビールを飲むなんて…

 あのきよっぺといい、このノンといい…

 ゆかりが電話で軽く言った
『元カノの1人や2人…』
 と、いう言葉が、浮かび上がってきていたのである。

 
 

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