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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 182 二人の違い

「だってさぁ、後2、3年経ったらさぁ、私はさぁ、42、3歳になっちゃうのよ、そして向こうはまだ30歳…」
 いくらノンが若く見えるとしてもさすがに30代前半とは通用しないであろう、そしてそれはそのまま私自身にも当てはまるのである。

 私が45歳の時…
 律子はまだ33歳だ。

 ゆかりは…35歳か。

 確かに、今だけなのかもしれない、いや、今だけなのだ…

 やはり歳相応が一番良いのかもしれないなぁ…

 私はそんなノンの言葉に、妙に納得してしまっていた。

「うん…」
 すると気付くとノンが私を見つめていたのだ。

 あっ…

 そしてその見つめてくるノンの目が、また濡れていたのである。

 欲情の目だ…

 そしてノンの爪先がまた再び…

 私の脛に触れてきていた…


「ねぇ…」

 抱いて欲しいの…

 ノンはそう囁いてきたのだ。

 そう言ってくるノンは、この私の知らない20年間という時間の流れの中で、大人の淫靡で妖艶な艶気というモノを育ませてきた…

 正に、大人の女のノンであった…

「抱いて欲しいの…」

「えっ…」

 抱いてって…

 私は情けない事に狼狽えてしまっていた。

「ねぇ、最後のお願い…」

「さ、最後って…」

「ううん、最初で最後の…かな」

「最初で最後…」

「だって、もう逢えないかもしれないじゃない?
 それとも今度は5年後?…
 10年後?…
 ううん、また本当に20年後?…
 わたし達、おじいちゃんとおばあちゃんになっちゃうわよ…」

「あ、いや、それは…」
 返す言葉が見つからない、そして実際に本当に次はいつなのか?…
 分からないといえるのである。

「だから最初で最後のお願い…」
 
 抱いて欲しいの…
 と、ノンは淫靡で妖艶な欲情の瞳で言ってきたのだ。

「あ、うん…」
 まさか、本当にノンとこんな展開の流れになるとは…

 本当に想像も…

 思っても…

 そして下心さえも、持ってはいなかったのである…

 だが…

 ノンは違ったのだ…

 違ったのである。

 私はあの20年前に逃げたのだ…
 だが、ノンは約2年近く追い続けてくれたのだ。

 思いの差、想いの重さがまるで違っていたのである…




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