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　183　再燃する想い

　思いの差、想いの重さがまるで違っていた…
　そして偶然にも約20年振りの再会を果たしたのだ。

　だからノンがあの昔の、20年前の不惑の想いを再燃する…
　これは当たり前の事なのだ。

　なぜならば、そんなノンの想いは、私のきよっぺに対して想い続け、ずうっと秘かに心の中で抱え持っていた青春の忘れモノの不惑の想い残しと同じ類いなのだから…
　だからこの思いの差、想いの重さの違いは当たり前の事であり、私には一瞬にして良く理解できてしまったのである。

「だから…最初で最後のお…」
「ああ、うん、分かった」
　そしてそのノンの…
『最後のお願い…』と、言うその言葉を遮る様に即答をした。

　それ以上…

　これ以上…

　愛しいノンに言わせたくなかった…のである。
　そして私は立ち上がって歩み寄り、後ろから彼女を抱き締めた。

「あ…」　
　そしてノンの小さな顔を振り向かせ、20年振りのキスをする。

「あ…ふ…」
　心が震えた、そしておそらく彼女も同じ想いであろう…
　その唇が合わさった瞬間にお互いの想いがあの20年前に還った筈であった、いや、還ったに違いない。

「抱きたい…」
「え…」

「ノンを…抱きたい」
　そして自らそう囁いた。
　それは男として、元カレとして、昔、真剣に愛したノンに対して、20年後の今、現在の彼女にこれ以上心の中の慟哭を曝させる訳にはいかないからである。

「ノンを抱きたい…」
「あぁ、こうちゃん…」
　そう囁き、抱き締め、再び口吻を交わし、唇を合わせ、舌を絡め、甘い唾液を吸う。
　すると口唇にノンの、この20年前に私に対して抱いてくれていたであろう熱い想いが流れ込んできて、心を震わせてきたのである。

　ああ、ノン…

　ノンに対して昔、そう20年前に抱いていたあの熱く愛しい想いが蘇り、心の中をいっぱいに埋め尽くしてきたのだ。

「は…、ふ…、こ、こうちゃん…
　う、ウチに、家においでよ…
　今夜は誰もいないからさ…」

　ああ…

『家においでよ…』
　
　これは、あの頃の二人の間の合言葉…
　
　両親夫婦で美容室を営んでいたから、いつもノンの家には誰もいなかった…
　あの二人でヤりまくっていた頃の合言葉、誘いの言葉である。

　心が、想いが、あの出会った頃の、ヤりまくっていた頃に還っていく…